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バービーのdojiのネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

小ネタにくすくす笑いながらも、これは意図、意図、意図の折り重なりの連続で、ひとつひとつに納得と賛同を繰り返しながらもたどりついた先に感じたのは、なんともまあ難解な映画をつくったものだ、という驚きだった。呆然とエンドロールの人形たちをみながら「表象…」とこころのなかでつぶやいてしまった。

ぼくはバービーでもケンでもないので、それぞれの苦しみにただうんうんと頷くことぐらいしかできなかったのだけれど、バービーたちの洗脳を解く鍵が「言語化」であることにはなんだかよっしゃと思った一方で、ケンたちがマッチョイズムを顕示しながらナイーブな歌唱に自己陶酔する姿にはなんだか眉をしかめながら「男って複雑なのか単純なのかよくわからん」と思ってしまった。ラストでケンたちは実存のようなものにたどり着くけれど、成長や成熟のようなものはそこになくて、どこにもいけないのが男性なのかもしれないと思うと、一応男性属としては立ち止まりたくなる。

個人的に気になったのはアランの存在で、バービーたちのグループの中で居心地よさそうに過ごす姿には、唯一シンパシーのようなものを感じた。そしてすごいなと思ったのは、ケン・ゴズリングが号泣するシーンでアラン・マイケル・セラがもらい泣きをしているシーン。彼も一応男性属だから克服できない弱さを持っているはずで、かといってケンのように実存を渇望するシーンを設けてもらえるはずもなく、ただ無害な存在としてそこにいるしかない。そんな彼の涙を一瞬でもとらえてくれたグレタには遠方からハグを送りたい。

ライアン・ゴズリングのシーンはぜんぶ笑えたし、マーゴット・ロビーのシーンはぜんぶうるうるとするものがあった。意図、意図、意図の演出と構成は映画としてはちょっと不恰好なように感じたけれど、クレイジーでエモーショナルな、なんともすごい一作をつくったなあと思う。グレタはつぎになにを撮るのだろう。
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