Mariko

バービーのMarikoのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.7
現実とは男女の在りようがある意味逆転している『バービーランド』を描くことで現実社会のジェンダー構造を考えさせる、というテーマで、色々な社会問題(かなり根源的なものを含む)を広く浅く掬って、大変にわかりやすく見せた作品。
脚本がシンプルかつとても上手に作られているし、鏤められたパロディやメタファーもとても明確なので、これは「大人」が観るには昨今珍しいくらいに理解しやすく、冒頭でいきなりテンション爆上がりした笑。

ただ今作、日本では配給にかなり特殊な意図?があるのか、PR(トレイラーくらいしか知らないけど)が子供から若年女子に全振りした方向だったのだけど、そもそも全く子供向けではないし、10〜20代女子の殆どは観てもそんなに面白くないんじゃないかと心配に。あと、たとえばハッキリとした意図を持って話されているセリフ中の”patriarchy"を字幕では「男社会」とか「男らしさ」という曖昧な表現にしたのは何故?とかね、そういう面ではいろいろモヤモヤした。

また当たり前ではあるけれど、ある「差別」を見せようとして別の「差別」をクローズアップしてしまっている側面もあって、こういうのはホント難しいんだね...とも思いつつ、アメリカで大ヒットしているということは、そこが最大に受け入れられるように描いているということなのかな。

ところで、日本ではバービーってどういう扱い(だった)なの?幼少時の私にとっては、歳のはなれた姉のおさがりでやってきたバービーはそんなに嬉しくなくて、何故かというと世間では既にリカちゃんが全盛だったからで、さんざんゴネて結局リカちゃんを買ってもらってバービーは箪笥の奥底に眠った記憶、だから。バービーに熱狂した世代って日本にもいるのかな?でもそんな私でも、踵がありえない角度で上がっていて、ワードローブにあった靴もすべてハイヒールであることに子供ながらにかなりの衝撃を受けていたことは鮮明に覚えているので、あの「ヒール問題」はすごく頷きながら観てた。

キャスティングは、もう何はともあれマーゴット・ロビーが凄すぎる。あの顔とプロポーション、彼女なしでは成立しなかったんじゃないだろうか、くらいの完璧っぷり。つまり、そのくらい「現実的ではない姿」への憧れを抱かせてる存在だったっていうことなんだよね、いやホントよくできてるわ。
個人的には、ついこのあいだ一気見した『シークレット・インベイジョン』で常に怖い顔してたキングズリー・ベン=アディルがニッコニコなのがツボだった。
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