大切な愛を手放してしまうと、2度とは戻らない。
何度鑑賞しても、悲しみに満ちたエンディングに胸が苦しくなる作品。
ファッションデザイナーとして名を馳せる、トム・フォード監督による愛の物語。
最近、監督は自身のブランドの一線を退く旨の発言があり、ファンの1人としては、第3作目の作品発表を期待して止まない。
世界的なデザイナーとして君臨するトム・フォードさんが映画を撮影すると聞き、どうせ金に飽かした道楽作品でしょ!と期待せずに鑑賞した「シングルマン」に度肝を抜かれ、腰を抜かした者としては期待せずにはいられない作品だった。
本作も鑑賞してみれば、期待を大きく上回る傑作だった。独特の美的センスとグロテスクさが混然となったオープニングから引き込まれ、緊張感を持続しながらその美しい世界観に飲み込まれて行くのが快感だ。
哀切に満ちたラストシーンの、スーザンの母親にそっくりな、傲慢で身勝手な青い瞳には何が映し出されていたのだろうか。