エンドロールの最後あたりに誰それに捧ぐ、という文章が出てくるのだが、あんなに不穏な献辞は初めて見た。
フィクション内フィクションの不思議さ。作品を読み解くというのはどういうことなのか? これは本当に復讐譚なのか? と考え始めたとき、物語というもの、映画というもの、そして現実というものの不可解さが合わせ鏡のように広がっていく。
現実が、そして映画が常に隠し持っている魔、ないしは不可解さを受け止めるのに、ジェイク・ギレンホールという役者はうってつけ。
リンチからの影響を如実に感じさせるが、単に表層的なスタイルの模写にはなっていない。もっと深いところから(もちろんいい意味で)剽窃しているという感じ。一種の『ベタ』と裏表の不可解さ。
きわめて特殊な物語なのに、同時に世界というものに対する普遍的なまなざしがある、と思った。
技巧的な面も含めて、文句なしに傑作だと思う。