会社をリストラされた元エリート族の中年男(那波隆史)が、痴呆症の父を養っている未亡人(愛田奈々)に感化されていく。生き甲斐を喪失させている大人たちの自己実現を描いている、オーピー配給のピンク映画。
荒木太郎監督が得意としている、底辺部のジタバタ群像劇。"テストの点数稼ぎ"のことしか考えられず、人間的情緒に欠けている元エリート族の中年男。会社を解雇されて、売春行為に手を染めている未亡人。この二人が磁石のように引かれ合う。
社会的トップの地位にいた者が、突然ランクを落とされて、社会的ゼロという異世界に入ってしまう。今まで触れてこなかった世界の住人と顔を合わせながら、少しずつ殻を破っていく過程が面白い。
主演女優・愛田奈々の麗かな女体美と演技力の高さは言わずもがな。ツンツンした中年男を攻撃する人間がいっさい登場せず、むしろ心の成長を皆で見守っているような雰囲気すら感じられる。荒木太郎監督の作家性、ここに極まれり。