エル・ファニングが出てるってだけで借りてきましたが、良かったです。
思春期の息子との向き合い方に悩んだ熟年のシングルマザーが、若い女性の友人二人に、一緒に息子の面倒を見てくれるように頼んで…みたいな話。
その後何か特別なことが起きるわけではなく、1人の少年と3人の女性のやり取りを、また、それを経て変化したそれぞれの姿を映した作品でした。
しかし、マイク・ミルズ監督でしたか。
言われてみると、「人生はビギナーズ」を撮った人の作品ですね、これは。
演出面と、抑制の効いたストーリーテリングは、よく似ています。
別に、静かな作品というわけではないんですけど、劇的に盛り上げようという意図をあんまり感じないというか。
前作ではゲイをカミングアウトする父親、本作では1人の少年の面倒を見る3人の女性と、そもそもの設定はユニークなんですが、それでも作品がリアリティを失ってないのは、そうした監督の姿勢があるからだろうなと思いました。
で、そんな本作、見るべきところはいろいろとあるんでしょうが、私が面白いなと思ったのは、会話のシーンでした。
会話劇と言っていいぐらい、様々な組み合わせで、たくさんの会話がなされるんですが、センスがいいです。
これはたぶん、脚本のセンス。
直接的だったり、暗示的だったり、重要なことだったり、とりとめのないことだったり、示唆に溢れる話もあれば、どの口で言ってるんだという話もあり。
人間はいつまでも未熟で、分かろうとしても理解し合えないことばかりですが、だからこそ分かり合いたくて、言葉を重ねずにはいられないんでしょうね。
画面に映し出される彼らの姿を見ていると、アイロニーと優しさが入り混じった監督の視点を感じます。
滑稽さと温かみ、両面描いてみせた筆致は、とても巧みだったと思います。
各登場人物が、自らの生い立ちや本作以後の自身のことを語る演出によって、本作で描かれた出来事が彼らの人生の一部でしかなかったことがわかります。
しかしだからこそ、彼らが共に過ごしたひと夏は、彼らにとってかけがえのない時間だったのだとも感じられて、それも上手いなと思いました。
どうでもいいとか、意味がないとか思えるような時間ですら、その時間を誰かと過ごせたのなら、それは奇跡なのだと。
そんなことを思わせてくれる映画です。
いい映画でした。