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レディ・バードのHOHOのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
4.8
女性が人生の岐路にあるとき、母になった自分の未来を夢見るのか、娘であるという立場を自覚するのか。
前者なら母に共感し、後者なら母に反発してしまうんだと思う。
そんなことを自分の現状に重ねて考えたように、この映画は母と娘の物語である。

母と娘の間にある、思い通りにならないこと。
それにより、娘は母を乗り越えなくてはいけない壁だと感じる。母は娘に、分身だと思っていたのに、と裏切られた気持ちになる。
愛しているのに、大切だと思っているのに、それを認められない自分自身への情けなさも募って、どんどん頑なになってしまう。これは、大人だとか子供とか関係なく、母も娘もこの気持ちを持て余して葛藤しているんだと思う。
この映画のレディバードも、そのママも、それぞれの親子関係を切り離して考えたら非常に魅力的な良い人たちだ。
レディバードは自分をしっかり持って、恋愛でも進路でもゴールのために行動できる子。そして個性的な服が可愛い!
ママは看護師として働きながら家事もこなしている。人間関係も大切に、丁寧に人と接している。何より、息子の彼女を住まわせるような懐の広さがある。
そんな魅力的な2人の衝突は、互いの素直になれない辛さを、そのもどかしさを観る方に募らせる。そして悟る。素直になるってことが、どれだけ難しいことか、と。

自分を心から認めること。
それは家族、生まれ育った町を認めることと密接に関係しているのだろう。それができて、はじめて素直になれる。
家族や町に反発するのは、自信を持ちたいという渇望の表れなのかもしれない。
未だに故郷を認められず、自信もない私にとって、レディバードの歩みは胸を熱くさせるものだった。
大切にしたい映画と出会えて、本当に嬉しい。
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