真田ピロシキ

レディ・バードの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
2.7
2002年に田舎のカトリック系学校に通う女子高生レディバード(自称)息詰まる田舎からは出て行きたい。優等生ではないが落第生でもない。跳ねっ返りであっても不良と言うほどでもない。家庭環境は貧しいが悲惨を極めてもいない。普通の若者を格別に大きな出来事を起こさずに描いた結果、特に感じ入るもののない平凡な映画となってしまった。最近ではイベントを増し増しされた下品なストーリーテリングに辟易しているのだけれど、こうも面白みのないだけのドラマなら嘘臭い方がまだ良い。

冒頭の助手席から飛び降りたシーンがレディバード(自称)というキャラクターの最盛期。映画が進むに連れて反抗心は萎み大学進学を果たした時にはレディバード(自称)は死に本来のクリスティンが生き返る。もうちょっと意気がりなよ…つまらない田舎も良い所だと発見するのはいい。でもそういうのは拗らせた若さを色々経験した上で辿り着くものでしょう。成人すらしていないのに小馬鹿にしていた宗教観を受け止め大衆的なヒット曲を「でも売れたし」と肯定するようになる"成長"ぶりはティーンエイジャーではなく啓蒙的な大人の視点が感じられる。青春映画なのにエモさが圧倒的に足りない。当初レディバード(自称)には『Life is Strange』のクロエ・プライスを感じていたのに蓋を開けてみると期待外れな奴だよ。まぁ、クロエもあんな運命を迎えるよりはレディバード(自称)みたいな平凡に落ち着いた方が幸せであったけどね。

演出面では青春映画で重要な音楽の主張が乏しくまるで印象に残っていない。映像も昼はなんとかエモさを醸し出せているのだけれど夜になるとただ見づらいとしか感じない暗さが続く。彼氏候補が実はゲイだったみたいなマイノリティ描写もあるが、現代アメリカ映画で賞を取るための教科書に従ったような卒のなさ。イケてない田舎の割にはティーン役の出演者は太めの親友ですら皆垢抜けていて、スクールカースト下位らしいのにレディバード(自称)さんはシアーシャ・ローナンがいつもの美人顔なためにあまり説得力を感じられない。もう少し絶望的にダサい奴とかおらんのか。嘘も本当のどちらも中途半端。お年を召された方が撮ったのかと思ったら監督は30代。うーん…分かりません。