jonajona

クリープのjonajonaのレビュー・感想・評価

クリープ(2014年製作の映画)
4.0
だいぶ良かった!
タイトルを裏切らない
めちゃくちゃなキモさで最高でした笑

ネットで依頼を受けて山の頂上の別荘に暮らす男のドキュメンタリーを撮ることになり、カメラを片手に訪れる主人公。
癌に犯され余命わずかという男は息子の為のビデオレターを残したいと目的を伝え、1日付きっきりで彼を追うのだが次第に言動に不審な点が見え始め…

という話。


〜〜以下ネタバレあり〜〜


前半から中盤にかけてのキモさが最高!
想像通りといえば想像通りだけど、
演出が丁寧で血が通っててキャラクターのキモさが際立ってました。なんか絶妙に『あれ?』という違和感を挟んできて、初めはちょっとテンション高くて人間的にうるさい奴で。苦手かなー、でもまぁ事情が事情だし可哀想だから同情する…って思うんだけど、その度合いが次第にグラデーションで色濃くなっていき、『うるさいやつ…って言葉で片付けていいのか?こいつ…』って位、通常の大人では考えられない様な嫌〜な絡み方をしてくる。
その辺りの『とはいえ背景が可愛そうだし簡単に突き放すのは忍びない』という人の良識のようなモノに漬け込むマジで気持ち悪い気味の悪さ、不可解さがたまらんかった。もう先が長くないって自称してるのに山無駄にキビキビ動き回るのツボだった笑。絶妙なライン。

すぐ子供みたいに隠れて脅かしてきたりするのほんとムカつく笑。それもしつこ過ぎるくらいに笑。あれ最高でした。
さっき喋ったウソを忘れてて、平然と全く違うことを言い出す、ってよくサイコパス描写で使われる常套手段だけどやっぱ怖い。どこまで本当の事を喋ってるのかその辺から怪しくなってきてキナ臭さが増す。
タイトルバックになってる階段の下から眺めた彼の影が逆光で表情が全く掴めない恐ろしいシーンを機に、次第に家に帰らせない為に鍵を隠すなど完全に人としてアウトなラインに入り込み、スリラーとして加速する。

願わくばその後に続く第三幕からの展開をそこまでのバネを使ってもっと爆発した恐怖のつるべ落としにしてくれたら最高だったかな。かなり静かなムードでおとなしく終わった印象。裏切りはなくてむしろ安心して見れた笑

povとしては充分だけど、カメラマンの主人公のキャラが全く見えないのでそれはちょっと難点なのかなぁと思う。

奥さんが仮面を被った自分を赤の他人と思ったまま犯されて喜んだ…という暗い過去のトラウマエピソードがテーマ的には凄く重要で、『他人と信頼のライン』がテーマなんだろうなと思う。
奥さんなんて結局居なかったんだから虚言なんだけど、彼の中のリアリティという意味では真実を語ってたんだろ。彼にとって他人は理解不能なモノで自分も他人に理解=信頼して貰えないと感じてて、だからこそ人を騙して取り込み殺すことで信頼の瞬間を冷凍保存したがる。
これは最近のサイコパス殺人鬼映画『ハウスジャックビルド』にも共通する心理とテーマで、でも本作の方がそのテーマはわかりやすく作ってると思う!
全く共感できないはずのサイコパスを主役に据えると必然的に『共感して貰えない=信頼感のライン』がテーマになってくるし、そのキャラにとってもこだわりになってくるのかと感じた。

テーマ性も凄く伝わりやすくて
しっかり考えて作られた佳作だと思う。
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