JunIwaoka

ブルーに生まれついてのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

ブルーに生まれついて(2015年製作の映画)
4.5
2015.10.26 @ 28th TIFF

ワイルドなオールバックにシックなスーツでキメる。サングラス越しにも分かる強張った面持ちが緊迫感を張り詰め、ぎこちない演奏から次第に昇天するモノークロームなオープニング映像からかっこよすぎて痺れた!
が、しかしそれが単なるプレビューであって、ジャズの聖地バードランドでマイルス・デイヴィスも才能に嫉妬したチェット・ベイカーが、ただのドラッグ中毒となり地の底まで転落したところからスタートすることが面白い。前歯とともに失ったものはトランペットを吹くという生きがいで、代償の苦しみは口の中に溢れる赤い血によって生々しく見せつける。彼がプライドを捨てて再起の覚悟を決めるのがカルメン・イジョゴ演ずる女性の存在で、納得できるくらい彼女は魅力があったことが印象的。しかしまぁダメ男というのはモテるもんですな。。女性というのは男にとって突きつけられる現実だと思うんだけれど、女性の存在によってこそやっとマトモにいられるという事実がとても美しいと身にしみて思った。
バードランドのステージに立つことはマトモな神経ではいられないことも分かるからこそ、Born To be Blueのシーンに言うことは何もない。悲しみは受け入れがたいことだけど、哀愁という人生の味わいであることも否定したくはない。演奏シーンはそれほど多くはないが疑いようがないJAZZ映画だった。
"Boyhood"ですっかり草臥れたおっさんになってしまったかと思ったイーサン・ホークが円熟した演技で、世界で3本の指に入るんじゃないかって思うくらい最高のダメ男っぷりが素晴らしすぎた。
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