TAK44マグナム

アウターマンのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

アウターマン(2015年製作の映画)
4.5
バルタン星人Jrのデザインの酷さは子供をバカにしている(←と、たぶん監督が言ってます)!


50年の歴史をもつ人気特撮ヒーロー番組「アウターマン」!
謎の群発地震が起きている世界(と言うか日本だけ?)に、架空の存在のはずであったアウターマンが本当に現れた!
そして、アウターマンに一度も勝ったことがない宇宙星人シルビーもまた、実在する宇宙ホームレスであった!
アウターマンこそが侵略者である事実を知った防衛省は、打倒アウターマンの為にシルビー星人の力を借りようとするが、勝利するには平成アウターマンシリーズの歴代主演俳優たちの力が必要であった・・・!
ゆけ!シルビー星人!
悪の侵略者アウターマンを倒すのだ!


田山真美子が麗しかった「地球防衛少女イコちゃん」も懐かしい河崎実監督が、その溢れんばかりの特撮番組愛をビッグバンさせた自分の趣味が全開映画!
どこからどう見てもウルトラマンシリーズをモチーフとしており、
特に、人気怪獣である宇宙忍者バルタン星人への一途な想いが映画全体に焼きついているかのようです!

河崎監督作というと、「いかレスラー」だの「ヅラ刑事」だのと、ネタ臭しか匂ってこないのばかり撮っているイメージだったし、この歳になるとB級映画を観てる時間がもったいなく感じる時もあって本作もスルーしていたのですが、フォロワーさんからのお薦めもあり観てみた次第。
・・・結果、とんでもなく面白いものを見せていただきました!
ありがとうございます!
いや〜、これは特撮ヒーロー好きならツボです!間違いなく!

まず、いきなりの平成ウルトラっぽいバトルシーン!
アウターマンの必殺光線なんて完全にティガやダイナのそれ!
そこからの、主演俳優のたちのサイン会シーンでもクスクス笑かしてくれます。
なんというか、描いている世界がみんなリアル(苦笑)
ヒーロー俳優さんはこう言いそう、オタクおじさんもこう言いそう、みたいなのが全部リアルに見えます。

嘘くさいし、説得力なんて皆無なシナリオなんですけれど、これも特撮っぽくて良いのです。
解釈が難しくなりそうになると、伝家の宝刀である「御都合主義なナレーション」で全てすませてしまうのも、いかにも特撮番組なんですよね。

アウターマンによる地球侵略と、シルビー星人と少年の友情、そして業界の内幕というか、特撮あるあるみたいなネタ部分が上手いバランスで融合していて、この辺りは多分、脚本に「ウルトラマンティガ」で度肝抜く物語を作り上げた右田昌万が参加、その手腕をいかんなく発揮したからではないかと思います。

モチーフが円谷プロのウルトラマンなのに、なぜか出演者の殆どが東映の戦隊やライダー出身者でかためられているのは良く分かりませんが、わざとなのか、人脈がそうさせたのか?
それとも、もしかしてコレ、円谷プロが怒っちゃったのか・・・?
一応、真夏竜さんやきくち英一さんも出ていらっしゃいますけれどね。

一時期、ワイドショーを騒がせた塩谷・ハリケンレッド・瞬なんかもアウターマンのグッズショップを運営していたりする元ヒーロー俳優を熱演していて良いのですが、本職が俳優じゃないニコ動の歌い手出身の歌手であるGeroが演技力とは関係なく存在感があって良かったな。
彼の役は地球に流れ着いたシルビー星人タルバ。
先祖代々、アウターマンにやられ続けて、DNAにまでアウターマンへの苦手意識が染み付いていると語るヘタレなのが、後半は俄然、格好良いキャラクターに変化してゆくのを飄々と演じていて好印象でした。
劇中、「(宇宙人は)巨大化するとバカになる」というセリフが出てきますが、巨大になったシルビー星人に命を吹き込んで、タルバという一個の人格を持つキャラクターとして認識させてくれたのは、間違いなく脚本と演者の力だと思います。

シルビー星人が近所の人の良いニイちゃんに見える一方、アウターマンは目が黒く、シルビー星人との決戦では凶器攻撃に徹することでヒールっぽさを演出しているのも、とっても分かりやすい(苦笑)
とにかく悪知恵の効く、すっげえワルなの。
でも、やられ慣れていないので、いざとなると脆いのも何かそこら辺のヤンキーみたいで現実的ですよね。


まぁ、何にしろ、本作はバルタン星人へのラブコールみたいなものでしょう。
ウルトラシリーズ随一の登場回数を誇り、それでもって毎度毎度やられ続けるバルタン星人。(注:「ウルトラマンマックス」では勝利しているそうです。未見)
成田亨による優れた昆虫的デザイン(デザイン元はセミ人間)、分身の術を使う宇宙忍者というキャラクター性、誰もが真似しやすい「フォフォフォ・・・」という声(?)・・・
頻繁に登場するということ以上に、ウルトラマンの怪獣といえばバルタン星人というぐらいに有名な宇宙の侵略者!
奴こそウルトラ怪獣界のメジャーリーガーですよ!大谷翔平かバルタンか!って感じです!

そう、「ウルトラマン」の「侵略者を撃て」で初登場、以後もJrやらメカバルタンやら、手を替え品を替えて地球に来襲しては、いつもウルトラ兄弟に返り討ちにされる運命を背負った悲劇の人気者にスポットライトをあてたかったのでしょう。
バルタン星人が企んだ悪事はアウターマンが引き継ぎ、切ない系キャラだけをシルビー星人にコピーしていますよね。
まるで内山まもるの「ザ・ウルトラマン」に出てきてもおかしくない「宇宙人の擬人化」じゃありませんか。素晴らしい!
(内山まもるのコミックにはウルトラの国の人間でありながらバルタン族の王になる者まで登場します。スーツ着れば誰でもバルタン!って、それで良いのか?)
見た目のイメージでワルだと思われていた宇宙人が実は良いヤツだったって、こういうの大好きです。
シルビー星人(当然、ネーミングは歌手のシルビー・ヴァルタンから。でも、バルタン星人の由来はヴァルカン半島かららしいですが)のデザインが、バルタン星人寄りじゃないのが少し残念ですが、あまりあからさまなのもアレなので、それはそれで良かったのかもしれません。


ウルトラシリーズに子供の頃いちばんハマってたマグナムにとっては、当然、バルタン星人はスター中のスター!
一番よく絵に描いたし、なんなら今でも見ないで描ける!
ヘタッピだけども!
近所の「おもちゃのロッキー」に飾ってあった30センチぐらいのリアルタイプなバルタンフィギアが欲しくて、でも買えないので眺めるだけだったあの頃を昨日のことのように思い出します。
「おもちゃのロッキー」も、とっくのむかしに閉店してしまいましたが・・・
ソフビ人形なら、ハイパーホビー限定だった透明なバルタンや、クリアブルーのバルタン、ジオラマセットに付属してたバルタン、あとメカバルタンやパワードバルタンもまだうちのロフトに眠っているような、そんな気がしますよ。

とにもかくにもバルタン星人は格好良い!
やられ役だけど、スペルゲン反射光つけたりして努力してる!
八つ裂き光輪で真っ二つにされちゃったけれども!
あ、ウルトラマンの顔がロボットみたいな楳図かずお版コミックに出てくるバルタン星人は、何故か石油をチューチュー吸ったりするので余計に恐ろしいよ!
羽根生えるし!

と言うか、両手がハサミじゃ生活が大変そうなんだけど、よくあの科学力を身につけたと、子供心に疑問でしたな・・・。
ハサミから火を噴くから火事も多そうだし!

こういうネタ映画にありがちな内輪ウケや寒いギャグに逃げず、シリアス基調なのも好印象。
変身アイテムがケン玉だったりはしますけどね(汗)
シルビー星人は、あんな風にウルトラ的に格好良い変身シーンがある宇宙人も珍しいんじゃないかな。

特撮、特にウルトラシリーズ(&バルタン星人も)が好きな方なら必見作。
是非、笑って明るく楽しんでください♪


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