お豆さん

帰ってきたヒトラーのお豆さんのネタバレレビュー・内容・結末

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

リアル版ボラット。この映画の肝はストーリーではなく、ヒトラー(そっくりさん)再来に対する人々の反応。それらの反応はドキュメンタリー形式でカメラに収められ、よりリアルに近いものになっている。大量の移民を抱えるドイツの現実と、戦争の暗い記憶の狭間で揺れる人々の様々な反応は興味深い。中には顔をしかめ、悪い冗談はやめろと諌める人もいて、ドイツでは禁忌の存在であり続けていることが伺えた。一方、そうした際どい「冗談」は社会批判として捉えられ、むしろラディカル視されるパラドックスが面白い。ヒトラーを過去のものとして安心して笑っていられる現在は平和そのものとも言えるが、知らず知らずのうちに彼の術中にハマりかねない危うさもある。なんといってもプロパガンダの名人ヒトラーにとって、マスメディアを味方につければ大衆の心を掴むのは簡単なのだから。この映画が撮影された年から2年しか経っていないが、その2年間にドイツやヨーロッパを巡る状況はさらに変化していて、そろそろ笑ってられなくなるんじゃないかな、なんて。

余談だが、イタリアのおばあちゃんに聞いた話が犬のエピソードとそっくりで笑ってしまった。戦時中、そのおばあちゃんの家はドイツ軍の駐在所になっていたそうで、ある時酔っ払ったドイツ兵の指を、おばあちゃんが飼っていた豚ががぶりとやってしまい、怒り狂ったドイツ兵はその可哀想な豚を撃ち殺してしまったんだそうだ。

2016. 21
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