ドイツのタブーに挑戦する問題作。
いやぁ。スゴイものを観ました。
「現代にヒトラーが甦り、テレビやネットで人気者になる」という物語なのですが…。よくも、まあ、こんなギリギリな部分を攻めた作品を作りましたね。
自国のトラウマに切り込んでいく…。
これはドイツという国が持つ底力だと思います。正直なところ、日本で同じテーマの作品を作れるか…と問われても即答できないです。うん。現時点では無理でしょうね。これは自分たちが歩んできた道のりを正視する覚悟が無いと作れない作品だからです。
ただ、残念なことに。
それほどの覚悟を持って本作は作られていても、現実では“コメディ”の棚に収められてしまうのです。まあ、それも致し方ないのでしょう。“手順”は大切ですからね。何事においても段階を踏む必要があるのです。
でも、この作品。
実際はかなり真面目な作品です。“コメディ”だと思って軽い気持ちで手に取ると楽しめない可能性があります。ある程度、社会情勢やドイツの政治、歴史に興味が無いと何が面白いのか解らないと思います。とは言え、僕の知識で解るくらいですから、気負う必要はありません。
あと、立ち位置として。
「ナチスドイツの罪状を国民が背負うのは困難だから全ての責任をヒトラーに擦り付けた」という考え方を持っていれば更に楽しめることでしょう。「ナチスもヒトラーも悪」という位置で思考停止している方にはお薦めしません。
それにしても、やはり映画って生ものですね。
本作にこめられたメッセージを受け取り、咀嚼するタイミングは限定されていると思うのです。だから、本作を10年後に観ても「ああ、あの時はそんな時代だったね」と思うだけじゃないでしょうか。まあ、資料としての価値は残るのですけども。
というわけで。
先行きが見えないこの時代。
今日か明日か一年後か。大きく時代が動く前に。本作の消費期限が切れる前に。遠くから聴こえてくる軍靴の響きを感じている方ならば、是非ともご覧ください。そして、選択するための準備を行いましょう。まずは、思考を止めないこと。そこからですよね。
