ひでやん

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のひでやんのレビュー・感想・評価

3.7
ハリウッド的な演出の中に散りばめたドラン節。

幼少期にレオナルド・ディカプリオにファンレターを送ったというドラン監督の実体験から着想を得ている今作は、ハリウッドの豪華キャストとタッグを組んだ初の英語作品。人気俳優と11歳の少年との文通を回想形式で描き、俳優の死の真相に迫る。

ドランはやっぱ構図がいいよねえ。スローモーションが効果的で雨のシーンが美しい。ニューヨークを俯瞰する空撮はドランらしくないと思ったが、もしかして天国からの視点なのか。内面の映像表現は控えめだが、その分感情が激しくぶつかり合う。母と子の関係はドラン作品のテーマでもあり、ドノヴァンとルパートの母をスーザン・サランドンとナタリー・ポートマンが演じる事で深みが増した。

母との和解で涙腺がゆるんだ。ジェイコブ君の演技はヤバいな、いちいち琴線に触れる。ドランの投影が少年のルパートでもあり、同性愛のドノヴァンでもあり、その不安定な内面描写が観客を突き放す。互いに文通が心の支えになっていたが、その思いはルパートの一方通行に感じた。大衆の注目が監視に転じて孤独を抱えていた人気俳優と、いじめられていた少年の絆があまり感じられず、少年の片想い、少年の妄想のように思えたので、実際に手紙に書かれていた言葉がほしかった。
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