ShinMakita

ハンガー・ゲームのShinMakitaのレビュー・感想・評価

ハンガー・ゲーム(2012年製作の映画)
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☆ハンガーゲーム0鑑賞で過去レビュー再録
(2012.10.3鑑賞)


身分格差が顕著な世界。富裕層が住む首都キャピトルと、労働者層が住む12の地方に別れている。12の地区は以前、叛乱を企てたことがあるらしいのだが、制圧され、その代償として、毎年2名の<生け贄=トリビュート>を出さなくてはいけなくなっていた。この2名の<トリビュート>は10代の少年少女で、キャピトル主催の『ハンガーゲーム』に強制参加が義務づけられている。このゲームは、1分間に何着の上着をハンガーにかけられるかを競うもので(嘘)、勝者はたった一人。映画は、そんな鬼のようなゲームに参加することになった第12地区代表の少女・カットニスの活躍を描く・・・

「ハンガーゲーム」

12かける2イコール24というわけで、24人の少年少女が殺し合いをやるわけなんですが、確かにこの不条理さは「バトルロワイヤル」と一緒。ちょっと違うのが、こちらはバトルがキャプトルじゅうにTVでライブ中継され、視聴者のウケがいいと、差し入れもらえたりルールが変わったりする、という点なんですね。作り手の思惑がからむリアリティ番組の要素が入るというイミでは、「バトルロワイヤル」ミーツ「トルーマンショー」とも言えるかも知れません。カットニス役のジェニファー・ローレンスの演技が素晴らしく、それが一番の魅力なんですが・・・



正直、けっこう文句も言いたくなる作品でした。


まず、「長い!!!」

ゲーム開始までの引っ張り方が尋常じゃないくらい長いんですよ。そのくせ、24人のなかで重要なケイトーら悪役の描き方が甘いという・・・



続いて、「設定を生かしきれていない!」

<トリビュート>たちが武器や食糧をゲットしてサバイブする時に、視聴者=スポンサーから差し入れがもらえるというのが面白い設定なのに、これを活用(?)しているのがカットニスだけというのは何とも寂しい。他のトリビュートたちも、これで生死の分かれ目になったりしないと面白くない。



あとは「字幕/吹替えはどうなんだ」という疑問。

字幕では、トリビュートを一貫して<プレイヤー>と表していました。そのほうが解りやすいけど、ニュアンスが違うでしょ。自発的参加じゃなくて、生け贄なんだから。吹替えでも「プレイヤー」と呼んでましたかね?





ただ、褒める要素も多いにあり。たとえば、「ご都合主義描写」を逆手にとるところね。

ヒロインが木の上に追い詰められて、下で敵が待ち構えているとしましょう。いつかは降りなきゃいけないんだけど、降りれば即、殺されてしまいます。さあどうするか・・・と上を見上げると、何と木の枝に、殺人スズメバチの巣が!そうだ、これを下に落とせば敵を倒せる!

みたいな展開。


あまりにご都合主義でしょ?


しかし、これがご都合主義に見えないんですよ。直接的に描いた場面はないんですが、実は、ゲームを管理しているチームが、ゲームを面白くするため、火の玉や人食い獣なんかを実体化してバトルフィールドに投入できる機能を持ってるんですね。恐らくこの蜂の巣も、それで現れたものじゃないかと思えるのです。つまり、ゲーム展開を盛り上げるための<ご都合>がどんどんぶち込まれて行くというのが、映画の観客にとっても面白いわけですね。これ巧いですよ。ルールが変更され、さらにラストでまた変更される「作り手の混乱」も、このご都合描写を逆手にとったクライマックスでした。






まあ、時間的余裕があったら、おすすめしたい作品。続編も作られるようです。「2」では、過去の参加者から募ってゲーム開始になるんだそう。ジョン・マクレーンの少女版みたいなジェニファー・ローレンスを応援しよう!そして、3部作がきちんと完成するまでドナルド・サザーランドが元気でいるように祈りましょう!
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