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風櫃(フンクイ)の少年のkouのレビュー・感想・評価

風櫃(フンクイ)の少年(1983年製作の映画)
5.0
若者の瑞々しさ、焦燥感、恋愛や友情、家族。監督の自伝的な内容という事もあり、監督自身の当時の感情を映像として切り取っているような、素晴らしい映画だった。思い返しては各シーンの素晴らしさを反芻している。

まずは男同士の友情について描いている映画であると思う。いたずらや喧嘩に明け暮れ、特に何をするでもなくふらふらとしている。風櫃での印象的なシーンは海辺での踊る彼らだ。何とも言えないエネルギーは、その滑稽さと美しさと、少年期をそのまま切り取ったような美しさがある。素晴らしかった。彼らはそのうち地元に居場所がなくなり高雄へ移っていく。

4人から3人となった彼らは家を借りるが、そこで同棲しているカップルと出会う。彼氏は不良で、荒々しい。次第に主人公、阿清は彼女のほうへ好意を持ち始める。彼らが借りている家の構造も見事だ。阿清の部屋からカップルの部屋が見えるような構造で、阿清は常にそちらを覗いているのだ。

高雄での生活をしているうち、主人公は故郷の父が亡くなる。そして友人たちも別々の道を歩んでいく。好意を持っていた彼女も離れていく。少年期の終わりは突然終わりをつげるのだ。しかしながら、危うげながらも人生は進んでいく。何とも言えない切なさと、無常感。それでも、声を張り上げて叩き売りをする主人公の姿にこみ上げる感情が抑えられない。ある国のある少年達、そして、そこに生きている人々、拾わなければ気づかないそのダイナミックさに、ただただ感動するしかなった。

追記:騙されて入った、ある映画館のあるカラーの映像。素晴らしかった。
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