このレビューはネタバレを含みます
わからない相手(異星人)とのコミュニケーションにおいて武力ではなく対話によって問題を解決していく。
時間の概念(未来に起こることがわかるという状態)を異星人から得るが、悲しい未来がわかった状態で人は受け入れて進むことができるか。
未来が、決まってるので進むんだけどってそういう思考するのを楽しむ作品。
多次元宇宙論とか一般相対性理論とかそのあたりが、好きな話題であれば思考するのに楽しみがもてる。
それが楽しめないとこの作品はあまり楽しめないので好みは分かれるかな。
映像として色味(カラーグレーディング)が丁寧にされている。少し暗めというか彩度が低い状態ではあるが落ち着いたストーリー展開と相性が良くマッチしている。
カメラワークや構図にもこだわりがあり静かにストーリーが進むときは特に見てても美しく落ち着いた面白さを感じる。
対話の言語が墨で書かれた丸い模様で表現されてるが美しい。ループしている形状が時間に始まりや終わりの概念ではなく全部が有る状態を表していて上手くできている。
娘の名前も回文でないといけないの言うのが、テーマをここにも使っててすごいなぁと感心した。
全体的に落ち着いたトーンで対話と時間の概念を考えさせられてゴリ押しも一切なく心地よい。
ストーリーの展開はちっとご都合主義だけど、映画の時間に収めるなら仕方ないかな。
私は、仕事で物理のシミュレーションを扱うことがあります。コンピューターで物理現象を計算させて、例えば、ある部品を手で押したら、何mm変形するのか?といった事を予測します。強度的に形状(部品の細さや太さ)が大丈夫かな?とか調べます。
日本の海洋研空開発機構(JAMSTEC)という機関では、地球の温暖化予想など、地球規模のシミュレーション(コンピューターで計算)を行っています。地球シミュレーターはES4という名前のスーパーコンピューターです。
さて、この映画では、未来も過去も時間がわかる状態。すでに決まった未来(過去も)。というのが、テーマとして表現されています。
もし、地球シミュレーターのようなものが、宇宙規模であり、それも、とてつもなく高性能なスーパーコンピューターで、宇宙の現象をすべて計算できるものがあったとしたら?
未来は予測できるし、予測できるってことは、実際に起こることは決まっていて、運命と呼ばれるものがあるって事になります。
この宇宙人は、とてつもない計算ができる文明だとしたら、未来はわかっちゃいますよね。
私たち人間が、未来は予測できないから、面白いんだって言ってる次元で生きていますが、宇宙はもう始まりから終わりまで、すべてが決まっているのかもしれません。
あなたが、このレビューを読むことさえも、決まっていたかもね。