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メッセージのVigocultureのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
5.0
大好きです
5回ほど繰り返し観て、感想も変わってきました。

色々なキッカケで考え方が変わっても(仮に人智を超えたと思える力があっても)
人間を人間たらしめるのは”意志:will”だという帰結。
選択の結果が極小か極大かを決めるのは”意志”なんだろうと。

遍くSFと同じように、異世界を見せることで人間の現存(いまここに在るわたしたち)を捉えようとする試みをしながら、今までとはまったく違うビジュアルを叩きつけてくる点でも画期的で、価値ある作品だと思う。

SFの文法通りに、
冒頭15分を過ぎたあたりで眠気を誘う起伏のない音と映像が10分ほど流れる。
ここから異世界入りましたよのサイン。
ノイズと印象的な音で不穏な空気を煽る音響。
均整のとれた建築物と不揃いな人間の陰影。

邦題をあえてあの無難なとこに落としたのなら、その狙いはまんまと成功していて、原題が最後に出た時、原題が持つ意味の可能性の大きさに唸ることになる。



原作と本作ではたしかに、基礎となる理論が違ったり、それによって筋道に無理があると感じる人もいるでしょうが、実は本作も原作の非常に重要なテーマ(魅力)をそのまま内包しています。

それは2つあって、
冒頭に書いた「人間の意志はものごとの結論とは無関係に価値がある」こと

それから

「何度も見なければわからない、見れば見るほど魅力的になる」こと

どういうことかというと、
原作は、物語自体が”一人称の視点”で、現在形と過去形未来形という”時制”を巧みに変えながら、同じセリフを何度も使うことという、
「ヘプタポッドの言語を習得した人の文章の組み立て」で語られているのです。
(映画では冒頭と最後にそれがはっきりとわかる程度でした)

つまり結末を知ってから組み立て直して読まないと、普段慣れた認識様式(前から順に、かつ、過去と未来が直線上にあるイメージ)では理解し難く書かれているのです。

そうすることで、直線的な認識様式を疑わせるという巧みな構成になっているんですね。

ということは、本作を一度観て魅力的に思えなかった人は、むしろこの映画の本当の魅力に触れたというべきです。

「一回じゃ理解できない」「根拠に無理を感じる」「あの判断に共感できない」というツッコミは、それを狙って作られたとすら思えるのです。

そう感じながらあえてもう一度体験することで、また違った感想を抱くことになると思います。
(当たり前っちゃ当たり前なんですが、それをさせるのが原作と本作の意図でもあるんです)

以下にWired米版編集者レビューの一部を引用しておきます。

『ー物語や演劇や映画を、何回も体験することでその豊かさを理解することの価値を示しています。これはルイーズが、時間から解放されても彼女の人生は損なわれないと考えることに似ています。この物語の構成自体が、「何回も体験すること」の素晴らしさを称えているのです。』

https://wired.jp/2017/05/20/story-of-your-life/
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