真田ピロシキ

メッセージの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.0
映画館で観た時はそれまで観ていた光景の意味が一変する物語の仕掛けに感激していた。種が分かった上で見返してみるとどんでん返しに頼っただけの物語ではないことを確認。

時間が過去から未来に一定に流れるのではなく同時に存在するという理論は本で読んだことがあるので理屈の上では分かるのだが、ヘプタポッドではない私には実感としては掴みづらい。しかしSF解釈だけに固執する必要はない。ブレードランナー2049が意外とシンプルな物語だったように本作も分かりやすい人生訓が見出せる。未来が分かった上でもその時を受け入れ良く生きる。歳を取ればだんだん未来が見えて来るし、その中には自分や身近な人の確実な死なども含まれる。それは変えることは出来ないが悲嘆に暮れるばかりではなく限られた時間を大切に生きようと考えれば本作のエイミー・アダムスと変わらない境地と言えないだろうか。ヘプタポッドがもたらしたノンゼロサムゲームの思想も世界中で分断が進む今の世に強くメッセージを贈るもので、やはりSFよりも人間ドラマとして解釈した方が通りが良い。

交差する時間に宇宙船の中で消失する方向感覚と視聴者の立ち位置は揺さぶられそれに浸るのがまた心地良い。物語を追わず音楽と共に眺めているだけでも堪能できる映画だ。