ガンビー教授

リメンバー・ミーのガンビー教授のレビュー・感想・評価

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
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ミュージカルという定義からは外れるような気がするが、「音楽」というものと音楽を弾き歌うことそれ自体にドラマ的なテーマ性が担われているので、例えばディズニーアニメーション部門の最新作であるモアナの、ミュージカルとして作られていることにほぼ必然性(説得力と言い換えてもいい)がない姿勢だとか、あるいは同時上映短編の目に余る退廃さとはやはり一線を画する。

で、作品の部分部分を見ていくとかつてのピクサー映画クラシックの要素というか型めいたものを感じなくもないのだけど(モンスターズインクやインサイドヘッド、カールじいさんの空飛ぶ家など)、しかし近年のピクサー映画のなかではかなり異質と言っていいほどストレートなテーマ・メッセージをツイストを利かせた脚本にのっけて語る、というこのバランスが理想的だった。つまり話としてはひねってあるけどそこから導かれる結論やテーマはシンプルという。エンターテインメントの理想的なありかたにも思える。ツイストもちゃんと効果的に機能してたし、いろいろな真相が明かされてから改めて物語をさかのぼって考えてみても「あそこ、おかしくない?」となるところがほぼなくて、ここ最近のピクサー映画での、脚本がちょっとごたついてるのでは……と感じさせるようなものとは差がある。

テーマがまっすぐシンプルだからこそ最後の展開は誰にとっても予想できるところに行くのだけど、これはむしろ物語の必然性の美しさを尊びたい。ただ、結論が予想できるだけに、終盤あたりの「為にする」ための展開というか、ハラハラさせるために一個何かピンチを足していくような部分に関してはもっと力業であっという間に回避してラストの展開に至ったほうが良かったんじゃないかと思う。テーマがストレートなだけにすっと結論に行ったほうが良かったんじゃないかと。90分台で語れる物語である気がした。

しかしまあそんなことはどうでも良く、魅力的な作品世界を構築し、存在感の豊かなキャラクターを描き、1分も飽きさせることもなく少年の冒険と、夢と現実の狭間における葛藤や闘いを丁寧に描ききって見せたピクサー映画の切れ味はやはり相当に鋭くて、インサイド・ヘッド以降のピクサーでは最高の成果だと思える。




顔の力が強い。デラクルスとか、ばあさんの顔。あの造形、あの濃さが良いよねえ。

悪役の末路を現実の死に方と重ねるのはなんというか、ちょっとアイデアに固執してしまった印象。

フリーダ・カーロの演出が前衛的すぎるというギャグ、本筋とほぼ関係ないあたりも含めて面白かった。
ガンビー教授

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