KANA

ピアニストを撃てのKANAのレビュー・感想・評価

ピアニストを撃て(1960年製作の映画)
3.6

再鑑賞。
トリュフォー作品は大学生の時結構観ててFilmarksに記録できてないものが多い〜。

かつて有名なピアニストだったシャルリ(シャルル・アズナヴール)は訳あって場末のバーでしがないピアノ弾きをしている。
ウェイトレスのレナ(マリー・デュボワ)はそんなシャルリに思いを寄せ、彼を立ち直らせようとするが、2人はギャングに追われるシャルリの弟のトラブルに巻き込まれてしまい・・

骨組みはクライムだけど、コメディ、メロドラマ、心理劇、スリラー…など、良くも悪くもいろんなジャンルがないまぜになってる。
なのでテンポもトーンも一貫性はないものの、トリュフォー作品の中では比較的間延びせず飽きずに観られるような。

ラウル・クタールによるキレのあるカメラワーク、マリー・デュボワの可愛さ、兄弟の愛敬、、いろいろ楽しめるけど、まぁなんといってもシャルル・アズナヴールだろうなぁ。
原作では屈強なタフガイのところを、トリュフォーはアズナヴールを使いたいがために書き変えたらしく。
小柄で優雅な体型、傷つきやすさ、脆さ、謙虚さ…
でも彼の人間性は実は見たそのままではない。
怖がりで頼りな気かと思えば大胆、じめじめセンチメンタルかと思えば一瞬の感情に駆られる。
自分の外側の弱そうなイメージを俯瞰してそれを利用する器用さを持ち合わせているように感じる。
実際女たちはこの一見気弱な男のことを好き好きーという感じで彼女たちのほうから身を投げ出してくるという…
シャルリ、いやトリュフォー、女心をわかってるね。

とはいえストーリー全体で見るとシャルリは器用貧乏なのか、死神であるかのような存在に・・
"C'est la vie."と言わんばかりの達観したような、でも憂いを秘めた絶妙な無表情で弾くリズミカルなピアノの調べ…
そのアンバランスが素敵な余韻のFIN。
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