KANA

サン・スーシの女のKANAのレビュー・感想・評価

サン・スーシの女(1982年製作の映画)
3.9

ロミー・シュナイダーが自身の企画として映画化し、奇しくも遺作となった作品。

舞台はベルリン→パリ。
少年時代に大切な人の命を2度ナチスに奪われたユダヤ人のマックスが、戦後年月を経たある日、隠れて生きる戦犯に復讐を果たす。
そしてそのまま逮捕され、面会に来た妻のリナに自分の過去を語り始める・・

ロミーはマックスの育ての母親エルザと、成長したマックスの妻リナの一人二役。
大人マックス役は初老でもセクシーなミシェル・ピコリ。

反ナチスの夫が逮捕されたエルザ役のロミーの演技が素晴らしく悲痛。
撮影中の病気・怪我や最愛の息子を不慮の事故で亡くしたことも大いに反映してそう…。
そしてそのリアリスティックな悲痛さが彼女の美しさに拍車をかけてた気がする。
幼きマックスとのクリスマスディナーシーンは衣装ともども眩い限り!

戦前の回想シーンと80年代のマックスの裁判シーンをパラレルに進行させるので、それぞれの歳の重ね方など感慨深いと同時に、入り組んだ状況や人間関係もとてもわかりやすかった。

ユダヤ人亡命者たちの憩いのカフェ、"サン・スーシ"。
そこは悲劇が起こった場所でもあり…。
エルザが時を経て同じ場所でリナとダブる。(どちらもロミーだから当然だけど)
マックスにとってエルザは母親であり、恋人だったんだろう。
ラストはそこでマックスとリナがホッとして、気怠くイチャつく画がフランス映画らしいけど、不意に流れるテロップの内容がそのまったりとした安堵を裏切るようにショッキング。
でもそこまでは描写せず、ほんの束の間の幸せを真空パックしたような幕切れで余計に切ない。
流れるメランコリックな『亡命の歌』は直後に亡くなったロミーへのレクイエムにも聴こえる…
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