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キングコング:髑髏島の巨神のdm10foreverのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

【とりあえず最後まで席は立つな!】

これは言うほど悪い映画ではなかったです。むしろ「面白い」カテゴリーに入れてもいいくらいだと思います。
今まで人間の立入りを拒み続けてきた南海の孤島に、「調査」という名目で人間が乗り込んでいくが、そこに待ち受けていたものとは・・・。設定的には『無人島(未開の地)×UMA(未確認生物)』という古くから使われてきたプロットなので、そろそろ頭打ち感が漂っているのも事実。
最近は「ホラー」タッチだけではなく「アクション」「サスペンス」「コメディ」など様々なテイストでとられており、時には「ダイナソープロジェクト」のような『モキュメンタリー(POV)」に活路を見出そうとしてみたり・・・(この作品に関して言えば相当な駄作だったが)。
で、行き着くところはただ一つ、そう「原点回帰」ですよね。それでもいいと思う。
そしてハリウッドがこの手の映画で原点とするのは「キングコング」しかないでしょう!となるわけですね。なるほど。
設定もオリジナルに忠実に「髑髏島」から始まります。人類未開の地が発見されたとして、アメリカはソ連に先を越されまいと政府が軍隊の支援までつけて調査団を送り込みます。表向きは地質調査ですが、実態は・・・。う~んよくある展開。

で、この映画何が凄いって、いきなりコングの襲撃を受けます。元々は人間が無差別に島に爆弾を投下したのが原因ですが、攻撃ヘリに乗っている兵士たちが文字通りボコボコにされます。普通、こういうUMA系の映画ってギリギリまで正体を引っ張る癖がありますが、全く出し惜しみすることもなく全開で出てきます。そしてとにかくデカイです。オリジナルのコングの身長は18フィート(5.4m)~24フィート(7.2m)と成人男性の3倍~4倍程度の大きさでしたが、31.6mと5倍近くも大きくなってきました。まぁこれについては色々あるでしょうが、個人的な見解は後ほど。
そんなでかいコングが夕日をバックに仁王立ちするシーンはゾクゾクしました。とんでもない島だな・・と。
この映画に限らず最近多いのが「CMで目玉のシーンを流しちゃって、本編を観たら「なんだCMが全てじゃん」」という『味見で終了パターン』て奴です。映画を観て欲しいのはわかるけど、折角映画館まで観に行くんだから、CMが全てなんて言わずに「劇場で見たなりのお得感」が欲しいわけですよ。なのに半ば肩透かしのような作品の多いこと・・(笑)。
ところが「キングコング」に関しては、その点は見事にクリアしていると思います。CMで見せた映像は単なる「味見」ですよと言わんばかりの大迫力映像が次から次へと繰り広げられます。4DXで鑑賞した人はちょっと酔ったんじゃないかな?でも様々な名作へのオマージュなんかも感じられて映像の出来としてはとてもよかったと思います(終盤、コングをおびき出すために森に爆弾を仕掛けて次々と爆破するシーンは『地獄の黙示録』じゃん!とすぐ気が付くわけですし)
そういった意味では劇場で観たことの価値が十二分にある傑作ではないかと言えるわけです。

・・・では、何故こんなに個人的なスコアが低いのか?という点。

今作はあくまでもリメイクではなく「リブート」だと思っています。時代や場所もあえて同じにして、新しくコングを再起動しようと。だから、初期設定はオリジナルと同じではありますが、そこから先は監督含めプロデュースした方々の意向が大きく反映されているとは思います。そこを加味して観た時に「ん~~」と引っかかった部分があったのです。
それは特定のシーンやキャストではなく、コング自身の設定についてです。

当初、この島に来た兵士達は地下の空洞を調べるためにサイズミック爆弾を何発も島に打ち込んだことでコングの怒りを買って完膚なきまでに叩きのめされたことは前段でも書いたが、どういうわけか、最後の方では「人間の守護者」のような立ち居地でスカル・クローラーから人間を守ってくれるのだ。
途中ウィーバーが墜落したヘリの下敷きになって苦しんでいるスケル・バッファローを助けようとしているところにコングが現れ、ウィーバーと1対1で対峙する場面があったが、コングは何もせずにその場を立ち去った。
まぁ良いことをしようとしてたわけだから、この行為でウィーバーを認めたというのなら、まぁ飲み込むとしよう。
でも基本的にはマシンガンや爆弾を持った兵士達なんですよね。この島の先住民達とは匂いも雰囲気も立ち居振る舞いも全て違う「外敵」のはずなんですよ。なのにコングは受け入れたんですね。それも心の交流などは皆無のまま・・・。

その辺から薄々と感じてしまったわけです「コングの設定を焦りすぎてはいないか?」と。
これ、先ほど書いたコングがデカイわけについての個人的見解にも関わってきますが、次回作を意識するあまりに人間との距離感を計り間違えたんではないだろうか・・・と思うのです。
本来は言葉も通じなければ人間の最新技術になんか触れたこともない、そんなコングがあんな短時間で人間と一定の意思疎通が出来るようになるなんてありえないし、例え設定でも無理があると感じたのだ。
あんな未開の島にいる動物なら、もっと野性味を前面に出すべきではないかと考える。もっと恐ろしくもっと凶暴に。
オリジナルのコングは野生のままNYに連れて来られてパニックをおこして・・・という設定だったが、多分今回のコングは都会に出てもパニックは起こさないように思える。それくらい「知性」を感じてしまうのだ。「理性」と言ってもいい。
巨大な動物だし脳もそれなりに発達しているという仮説はなくもないけど、文明などとは程遠い動物が見せる行動としては逆に理解できなかった。これを観て「コングは優しい」とか「コングは正義の味方だ」とか感じてしまっている時点で、水戸黄門的な安心感をコングに求めていやしないだろうか?
昨年の「シン・ゴジラ」の回でも書いたが、ゴジラはもともとホラー映画として作られた。なのに時が経ちシリーズ化されるにつれてゴジラの存在位置が変わっていき、気が付けば正義の味方として「キングギドラ」や「メカゴジラ」と戦う羽目になっていた。オリジナルを観た後でそれらを観ると何とも言えない違和感を感じる部分でもあるのだが、キングコングにも同じ現象が起きているのだとしたら説明が付く。人間の都合のいいように飼い慣らされたコングが画面に出てきて大暴れしたのだと。

エンドロールが終わって「さぁ席を立とう」という時に、最後の映像が流れる。オマケにしては随分意味深である。
一つだけいえることは「あぁ、やってしまった・・・」。
以前から噂にはあったが「ゴジラ」との対決はストーリー上の規定路線として組み込まれており、既にその伏線を最後の最後にこぼしてしまったのだ。もう後戻りは出来ないよ。どうりでコングのサイズを大きくしたわけだ。じゃなければ次回作でゴジラと対峙した時に戦いが成立しないからね。
でも、これはやっちゃいけないな・・・・。「バットマンVSスーパーマン」よりもいけないかもしれない。折角キングコングの世界観に浸ったまま席を立とうとした2分前の余韻が豊平川にあっさり流されていったような感じだよ。

どうなんだろうな~結局は観ちゃうんだろうけどさ(笑)せめてグダグダだけはやめてください・・・。ゴジラはともかくキングコングは極端に言えば「哺乳類」なんです。普通ではないけど「動物」なんです。口から光線出したり空飛んだりはしないんです。
やられれば死ぬんです。だからこそ愛おしいんです。

・・・あと、これだけは言っておきたい。
今回何故点数が低いのか?あの吹き替えは酷くないですか?別にGACKTも佐々木のぞみも嫌いじゃないですよ。だけど、普通に考えたら吹き替えにキャスティングする面子ではないよね。これだけの大作なんだから吹き替えのキャストで客を呼ばなきゃいけないようなもんでもなかったはず。
はっきりいって「下手」です。近年稀にみるグダグダです。映画がストレートに入ってこない恐れもあるレベルです。
興味のある方は是非『字幕版』でどうぞ。
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