映画を見る猫

ハッピーエンドの映画を見る猫のレビュー・感想・評価

ハッピーエンド(2017年製作の映画)
4.4
ハネケは本当に期待を裏切らない。
どれだけ歳を重ねても、演出センスが一切衰えず、毎回此方の背筋をひやひやさせてくる。
映画を平面ではなく、空間的にとらえる、演出の上手さは随一。
画面外の世界を想定した音、フレームづくりが徹底されていて、全てのショットを見ていて全く飽きない。
『隠された記憶』を思わせるファーストショットもなかなか好みで、相変わらず一度カメラにおさめただけで、特定の人物に不穏な影を宿らせるのが上手い。
話の作り方は淡白だが、きちんと主題もある。
死を「実際に」目の当たりにして、体が震えたと語る祖父。
一方、死を携帯の「カメラ」を通して直視することができる孫。
人物として、若さと老いを対置させ、皮相的に現代人とメディアの在り方を提示する解りやすい構図ではある。
しかし、あからさまでなく、実に然り気無く残酷なやり方で演出を重ねていくので、くどさとは無縁。
過去作品は全て見ているが、もう一度改めて見直したくなった。これほど鬼才という言葉が似合う映画監督は他にいないのではないのではなないだろうか。