けー

ビースト・オブ・ノー・ネーションのけーのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

とっても辛い。


西アフリカで内戦が勃発。アブーは家族と共に中立地帯の村で暮らしていたが、政府軍が中立地帯にも攻め込んでくるという情報に男は止まって村を守り、女子供は平和軍が駐留する街に避難することに決定する。

11歳のアブーは母親と共に避難する予定だったが、人員オーバーで車に乗ることができず父、兄と共に村に止まることになる。

夜襲を受け、反乱軍に加担した罪で村に残った男たちは次々と処刑されていく。

アブーとアブーの兄は命からがら逃げ出すが。



「獣の棲む家」では紛争地から脱出した後に待ち受ける地獄が描かれていたが、この映画で逃げられず紛争地帯に止まっていたかどうなるかということアブーの視点で知ることができる。



アブーはゲリラに救われ、少年戦闘員にされる。    

少年兵士についてはニュースやドキュメンタリーなどで聞き齧った程度でしか知らなかったけれども、なんと言うか自分のイメージとして持っていた巻き込まれ方とは全然違っていた。 

普通に幸せに暮らしていた家族が紛争によってあっという間に別れ別れにされ、命を奪われる。  

あまりにも全てが唐突に激変してしまう感じがとても恐ろしかった。

生き延びるには順応するしかなく、順応したところで救いがあるわけでもなく。  

政治家の駆け引きは自分たちとは全く関わり合いのないところで行われ、それらの都合で無駄に戦闘は引き伸ばされ、何がどうなればこういうことから解放されるのかということも全然見えない。

アブーはただただ生き延びようとしただけなのだけれども。

もしもアブーを咎めるのだとすれば、他にどうすれば良かったというのか。


見終わった時にはズシーンと気持ちが沈み込んでいた。

他にどうすれば良かったのかと考えたら、そもそも紛争が起こるのが悪いんじゃんかと。

紛争はどうして起こるのか。

政治的駆け引きなのかなんなのか。 

もう頼むから普通に生活させてくれよ!と言いたくなる。


アブーを助け少年兵にするゲリラのリーダーをイドリス・エルバが演じている。

カリスマ性があって狂気と正気の境界線でほっとんど狂気サイドに足を突っ込んでいるようなすごいキャラクター。

唾棄すべきことをやらかしまくっているにも関わらず尚且つどこか惹きつけられずにはいられないような教祖的カリスマ性をビンビンに放ちまくっているところから、終盤に小物であることを思い知らされ化けの皮が剥がれ落ちるようにロクでもない人物にストーンと成り下がる。

成り下がるというかロクでもないのは元々なんだけれどもそれを強烈なカリスマ性が覆い隠していたというか。

その落差の出し方が見事で、久しぶりにイドリス・エルバやっぱすげー!!!と見入ってしまった。

正直イドリス・エルバが出ているんじゃなければこの映画を最後まで見る勇気は出なかったんじゃないかと思う。



I think if you talk to me about it, it will make you feel better.

I saw terrible things...and I did terrible things. So if I'm talking to you,it will make me sad...and it will make you, too, sad.
In this life...I just want to be happy in this life.
If I'm telling this to you...you will think that...I am some sort of beast...or devil.
I am all of these things...but I also having mother... father...brother and sister once.
They loved me.
けー

けー