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キングスマン:ゴールデン・サークルのpikaのレビュー・感想・評価

3.0
役者は何も悪くないのにタロン・エガートンを見るたびに嫌悪感が湧き、コリン・ファースが苦手になるほど前作が生理的にダメで、今作も完全スルー予定だったんだけど「むしろ前作がダメだった人ほど不快感が解消されるよ!」と背中を押されたので見に行ってみた。
結果、見に行ってよかった。
好きか嫌いかで言えば嫌悪するほどではないが好きでもない感じでもう見ることはないし続編も見ないと思うが、前作に対する嫌悪感はまだマシになったかなと、その意味で見に行って良かった。

作品としては可もなく不可もなく、毒にも薬にもならず、消化したら後に何も残らない印象だったんだけど、良くも悪くも前作の不快感はなく、前作ファンが批判的な感想を持ってしまうのがとても良くわかるほど別のベクトルの観客に迎合したような印象。
観客が求める「こういう映画を見たかった!」という理想を完璧とも言える形で具現化したマシュー・ヴォーン監督の作風は、元々プロデューサーであった目線から生まれたものなのかと考えた。
前作で漏れていた「観客の求めるもの」を盛り混んだことで全方位が納得するものへと意識が向いてしまってが故に悪く言うとありきたりな、普通の娯楽作になってしまったのか。

脚本で個性を出しつつスタイリッシュで鮮やかな演出捌きを見せてくれるが、感性で計るのではなく頭の中でミリ単位に計算しつくされた教科書的とも言える印象を受ける。
気持ち良いほどの完成度だけど優等生的な隙のなさを感じるのは、映画を作りたくて作り始めたんじゃなく元々プロデューサーやってて作り始めたから、自分の作家性よりも観客の求めるものを優先させるという冷静さが先行するのか、だからこそ成功したのだろうか。

ヴォーン監督の作品群がツボにハマる人々の理想を具現化した功績はとてつもなく、クオリティ的にも完璧なんだろうけれども、逆を言えば受け手の側に寄り添い過ぎてウケることを念頭に置いたが故に観客の求めるもの以上の何か、監督自身のパーソナルな個性はないんじゃないか、ここまで求めるのは贅沢過ぎるし、ファンも多くてヒットもしててこれ以上はないものねだりなのはわかるが、そのポイントが私のツボにハマらないところなのかなと今作を見てなんとなくシックリきた。
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