エクストリームマン

キングスマン:ゴールデン・サークルのエクストリームマンのレビュー・感想・評価

4.0
My name is Poppy Adams, CEO of the Golden Circle.

ゴールデン・トライアングルもじってゴールデン・サークルでええやんっていうマシュー・ヴォーンの発想がもうバカでいいよね。そしてアメリカを勝手に守ってるキングスマンの「血を分けた兄弟」の組織名がステイツマン。いや、もうほんとバカだよね。最高だよ。

キングスマン一流のエージェントになったエグジー(タロン・エガートン)が、前作の敵リッチモンド・ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)とは違った意味で世界征服を企むポピー・アダムズ(ジュリアン・ムーア)に文字通り全てを奪われ、マーリン(マーク・ストロング)と共に唯一の手がかりを追っていざアメリカへ。いやー、ロキシー好きだったんだけどなぁ…。まぁ、これぞマシュー・ヴォーンの続編というか、『キック・アス:ジャスティス・フォーエバー』感というか。並び立つもの根刮ぎ壊して更地にしたから、ほらまた頑張れるでしょという無邪気さが炸裂している。そして本作はあくまでエグジー&ハリー・ハート(コリン・ファース)が主役の映画なので、被りそうなキャラクターは登場こそ派手なものの、昏睡したり=テキーラ(チャニング・テイタム)メンテナンス担当だったり=ジンジャーエール(ハル・ベリー)とあくまで顔見せ程度の登場。次回作では彼らも活躍するのかな。

お約束とはいえ、ハリー・ハートの帰還は嬉しかったな。マーク・ミラーだったら絶対にやらなさそうな展開だけど、そこはやっぱり2人のコンビネーションこそ前作が成功した大きな要因だった筈なので、外せないところだったのだろう。というか、あの世界だったら、たとえ頭が爆発しても謎のテクノロジーで生き返りそう。

それにしても、ステイツマンのメンバーが異様に豪華。ジェフ・ブリッジス、チャニング・テイタム、ハル・ベリー、ペドロ・パスカルというこの並び。だからこそ、プロフェッサーX的にというか、豪華メンバーが映画全体を食わないように活躍が抑えられていたのだろう。

敵の首魁:ポピー・アダムズを演じたジュリアン・ムーアが良かった。やっぱりジュリアン・ムーアは悪役が似合う。最後の最後まで崩れないところがまたサイコっぽくていい。病み切った結果一周して安定している感じ。笑顔で人肉バーガーすすめるところが素晴らしい。キングスマンの敵はいつもアメリカの一面を象徴しているね。今回はマリファナの合法化をストレートに訴える敵で、作中の(画面に映る)マリファナ使用者が「善人」ばかりなところがまた皮肉というにはあまりにもまっすぐ。少し話しを複雑にしているのは、かつてヤク中に恋人を殺されて復讐に取り憑かれたウィスキー(ペドロ・パスカル)がポピーの陰謀に乗じてマリファナ使用者を一掃しようとする(というか、死ぬに任せる、助けない)ところかな。まぁ、それもド派手なアクションで、最後はやっぱりミンチにして終わるところが、清々しいほど悪趣味で最高。

美術も素晴らしくて、特に丸ごと建造したというポピーランドが狂っていて素晴らしい。別にその時代を体験したわけでもないのに50年代に取り憑かれているのは、何もカンボジアに引きこもっているポピーに限らないわけで、彼女の衣装と共に、郷愁の墓場感がなんともいえない。

本シリーズは、今後も目一杯バカやるシリーズとして続いてほしいものだ。