doji

キングスマン:ゴールデン・サークルのdojiのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

コリン・ファースの続投のニュースは、前作にとても興奮させられた身からすると、少なからぬ不安と落胆を感じずにはいられなかった。ハリーが生きていたというのは、あまりに続編として御都合主義的な展開だし、前作のラストからすると不誠実だと思ってしまったからだ。

けれども、結論から言ってしまうとこの2作目にはとても関心してしまった。1作目のファンを裏切ることなく、本作ではハリーの帰還を、なによりエグジーとのこの上ないほどの再会として描いているからだ。

ハリーの死を受け、エグジーがステージの中央に躍り出ることをなによりもドラマチックに前作は描いているけれど、そのままハリーがいとも簡単に成熟したヒーローになってしまっては、話運びとしてはイージーすぎる。それでは続編以降の展開に、カタルシスは正直生まれにくいだろう。クリエイターたちがそのことを意識しているのは明らかで、本作でハリーと再会することで、本シリーズをエグジーの成長過程を描くものがたりにすることに成功している。

代理父としてのハリーの幻影に囚われたエグジーや、再会によって精神的なパートナーとしてさらに力を得たようにみえるエグジーは、ヒーローとしての完璧さだけではない人間味を帯びることになる。それが単純な完全無欠なスパイ映画にはない魅力をこのシリーズに与えているとおもう。

ひとつだけ残念なところといえば、ウィスキーとの対決がすこし軽く描きすぎているところだとおもう。全体的に倫理的なウェットさを排した軽さがこのシリーズのおかしみだけれど、ウィスキーの出自を聞いてしまうと、他の敵と同様にミンチにしてしまうには、あまりに無慈悲すぎるような気がする。彼の悲しみは、ガールフレンドの死に怯えるエグジーと同じ論理であったはずなので、そこはお灸をすえるぐらいの幕切れでもよかったのでは(あと個人的に彼の武器がライトセーバーの西部劇的再解釈のようでかなり好きだったというのもあるけれど)。

ハリーの記憶が戻る瞬間や、マーリンの絶命シーンも正直ファンとしては泣いてしまったし、とても満足がいく続編だった。その分、とにかく本作の宣伝の不誠実さが目についてしまった。あの予告編のエグジーは不遜に見えすぎているし、ハリー型のアンドロイドをキングスマンが作っていた、みたいなとんでも展開でもやるのかと思ってしまう。宣伝がむずかしい展開ではあったとおもうけど、本作のファンへの誠実さを汲んだ宣伝をして欲しかった。
doji

doji