ごろちん

奇跡の女のごろちんのレビュー・感想・評価

奇跡の女(1982年製作の映画)
4.7
今まで観て来た宗教映画の中でも特に中立で誠実な作品だった。

多くの宗教映画はスクリーンの中で「奇跡」を直接目撃することが出来る。例えば死人が生き返ったり、身体が宙に浮いたり。観客はその奇跡が神のみわざかトリックかを瞬時に見分けることができる。目の前で起きていることに対して疑念を抱くことは無い。

この映画は奇跡が起きるところを直接見せない。奇跡と呼ばれる出来事はスクリーンの中で確実に起こっているはずなのに、神の存在はあやふやなまま。そんな中、奇跡の女、エルサのうわさは民衆の間でどんどんと広まっていく。

特筆なのが、多くの奇跡が起きつつも「信じるか信じないかはあなた次第」というスタンス。神がいるともいないともハッキリさせないのは、この映画の主役が「奇跡の女」でありながらも、その奇跡に対して様々な反応をする群衆と私たち観客に目が向いているからだろう。

宗教がテーマの映画は個人的に割と好きで、理由は宗教を通じて人間の本性が炙り出されるから。この作品は人間の強さと弱さが繊細に表されていた。フィリピン映画の質の高さに驚かされた。
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