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君と行く路のENDOのレビュー・感想・評価

君と行く路(1936年製作の映画)
4.2
戦前の方がauthenticな日本映画の不可思議。鎌倉で既に旦那は鬼籍に。妾の立場から家と生活を保証されている過保護な母に育てられた美男子兄弟の話。母親のことをマザーと呼ぶボンボンの甘ちゃん。出自の卑しさに劣等感を拗らせている長男の朝次は大川平八郎、棒読みの山懸直代は金持ちだが傾きかけで政略結婚以外に選択肢がない。理想主義者はしばしば挫折する。吝嗇な母に墓の中へ持っていけばいいだろ?と小言。鶴亀鶴亀。死の香りが付き纏う。清河玉枝への冷酷な接し方に震える。妾の芸者・金銭ずく・女中扱い。酷すぎるだろ?失恋で自殺する視野狭窄。弟の指摘通り馬鹿野郎だ。ヒロインの山縣は大根過ぎて悲惨な通告に驚嘆・慟哭せず感情移入させてくれないので不思議な気持ちに。母親である清川玉枝は事故だと信じ、息子の自殺した心理を全く理解できないサイコパスなのでは?抜けてる母親との対話では埋まらない深い溝。この親子間の断絶こそが悲劇。結局現実主義者には太刀打ちできない。軍国化していく暗い世相に若者の心中が流行った時期でもあったのです。繊細さの欠片もない。池に浮かんでいたという科白のみの死は突き放されている。ラスト10分で転覆して震えましたよ。
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