結構前に映画好きの友人に勧められて、今年見たマッシブタレントでも神映画として紹介されていた。いつかは見ようと思っていたのが、プライムビデオの見放題終了がいいきっかけになった。
1は昔に見たと思うけど、あんまり覚えてない。
めっちゃ良かった。刑務所のシークエンスが超好き。
こんな優しい世界なんて実在しないのが悲しい。
パディントンの無垢さが世界を暖かくしているんだけど、ガチのマジの悪意と対面したら彼はどうなるんだろうと、100エーカーの森の住人達に対して思ったことと同じことを思った。(あっちも熊が主役だ)
100エーカーの森には悪意が存在しないためプーさんやイーヨー達は悪意への免疫を持たず、だから自分は、彼等が悪意に対面してしまったらどうなってしまうんだろうと不安になる。
しかしそもそも100エーカーの森に悪意が存在しないのは、あれがクリストファーロビンの空想の世界だからで、だから悪意ある異物が紛れ込むなんてことは起こり得ない。
一方のこっちは、多分マジで喋る熊が現実のロンドンに来ている。
だから悪意も存在するし、それがパディントンに向けられさえする。それでもパディントンの無垢さによって全ては好転していくんだけど、それってかなり楽観的な世界観だと思った。
原理上悪意と対面し得ないプーさん達と違って、実際に悪意の存在するロンドンで、それでもみんながパディントンに心動かされるって、パディントンがちゃんと報われるなんて、そんなことあるか?
しかしこれは確かに感動的で、それはパディントンのスタンスが関係してるんだと思う。
パディントンは相手の悪い部分は置いておいて、彼等が元々持っていた良い面を見つけていく。
(「俺、いちごのパンナコッタ作れる!」ってのが象徴的。このシーンめっちゃ面白かった)
だからパディントンは犯罪者とも仲良くなれるし、悪人であることはパディントンにとっては問題ではないので、最終的な悪役の扱いもザマアミロな感じではなく、彼は彼で報われる終わり方になっている。
つまり、パディントンと関わるときには、自分の悪い部分は考えず、良い部分だけを考えれば良く、その間、自分は良い人になっている。なのでパディントンの周りは暖かくなる。
ただしそれが効かない相手も存在する。この映画で言うと、パディントンを攻撃すること自体が目的になっている意地悪な自警おじさんがそう。これは悪い部分を無視してもどうにもならないので、彼はパディントン派閥の人間から排斥されることになる。
つまりパディントンが救っているのは、「自分でそうなりたいわけじゃないけど、ときどきどうしようもなく悪い人間になってしまう人達」ということだ。
これが近所の人がパディントンを必要とし、さらに言えば観客達がパディントンに感動させられる理屈なんだと思った。
──その他、細かな感想。
こういう細かな部分が楽しい映画だった。
・街の人達と交流しながら自転車に乗せてもらって、ゴミ収集車に乗り換えるのめっちゃ良いな。
・寒々しい大佐の部屋がパディントンの窓拭きによって暖かく照らされるの、象徴的で良い。ここに限らず、色彩の寒暖の使い分けが良い!終盤近くの電話ボックスのシーンとか!
・優しいだけじゃ望むものは得られないの悲しい。
・パディントンにとってはロンドンの様子をおばさんに伝えるための本。悪役にとっては宝のありかを示す地図。各々が別のレイヤーで対象を見て、それを欲してるのが面白い。(だからこそ最後両者の幸せが二者択一にならずに済み、優しい終わり方に行けたという効果もある)
・ピンクの囚人服を着たパディントンかわいい。可愛らしい色彩設計とか、どことなくウェスアンダーソンっぽさも感じる。と思ったら、脱獄シーンの映像がまさにウェスアンダーソンだった。精巧に作られたミニチュア感。
・いちいち動きが可愛い。鼻つまんでクック帽膨らませたり、砂糖のから瓶舐め回したり。
囚人達も可愛い。面会シーンの、悪口が聞こえちゃってた気まずさとか最高。みんながぬーって画面に出てくるのも可愛い。
・ナックルズってマッドアイムーディだったのか!!イニシェリン島だったりヒットマンズレクイエムだったり、いい役多いな。