レオピン

ハドソン川の奇跡のレオピンのレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
3.9
マイエアクラフト ユアエアクラフト 

イーストウッドの実録再現 リアル実況見分シリーズ
またしても本人登場 ザッサーではないよ

コックピットの警報に「ギアアップ」の音。経験ないのになぜかトラウマ級。。バードストライクでの異常発生から着水まで たった208秒

一寸先は闇とはまさにこのことで、たった数分前の離陸時の緊張から放たれほっとした乗客を襲ったどん底の恐怖 これはたまらん

機長のサリーがヒーローから一転、疑惑の人物に描かれるのもそういうこと。とんでもないミラクルに見えることでも当人にとっては当たり前の事だったり、落とし穴だと思っていたものが実は飛躍のきっかけだったりと。人間万事塞翁が馬。イーストウッド爺ちゃんのことわざのような作品

爺ちゃんらしく無駄なことは一切ない脚本。それでいてあの順序以外では考えられないという。

救助に向かうフェリーの四角い顔のキャプテンとか 出動前まで下らない話を全力でしているレスキューヘリの面々 若いながらも冷静沈着な航空管制官 みんな善人(マトモな人)らしく立派に見えた。
英雄はできることを成す 成せなかったことは語らない ただ淡々と行うのみ

NYのオフィス街をジャンボジェットが超低空で突っ切る姿
7年4か月前の悪夢が誰の脳裏にも蘇った瞬間だろう。 

155名 乗員乗客全員無事
この報告を受けるまで制服も脱がずに、いや脱げずにずっと乗客全員の無事を祈っていた。脱出時に浸水のせいで機内の全てを自分の目で見届けられないでいた。この責任感よ。

余談だが「失敗は他人のせい 成功は私のおかげ」という自己奉仕バイアスがある。アメリカ人がよくアカデミー賞などのスピーチで、成功は誰と誰と誰のおかげですと長々しゃべるのはこの事を意識しているからだ。それ程に普段は周りなんか気にしちゃいないという。だから日本人がこれを単に取り入れるとしっくりこない。アジア圏は集団奉仕バイアスが強いから当たり前にすぎるのだ。脇道それたが、あのリーマンショックからわずか4か月で起きたこと。この出来事が美談として広がったのもそういう深層心理があったのではないか。

まぁ日本人好みのキャラクターといえる。少なくとも『フライト』なんて映画の酒浸り機長よりもマシだ。

国家運輸安全委員会(NTSB)が査問委員会のような悪役をつとめた。話は変則法廷モノとして進むが、あの調査委員会。当たり前といえば当たり前だが航空業界の進みっぷり。他業界でもあそこまでの検証や調査が機能すればなぁと思ってしまった。

ファクターXは機長でしたねと指摘した委員会の女性メンバーのエリザベス。彼女もよかった。
あと副機長のエッカートも。ああいうジョークがさっと出せる人間。あのような一言がはけるのは余程の気迫の人物だということを忘れてはいけない。

最後の最後でようやく笑顔を見せたサリー。16歳で初めて空を飛んだ時に上官に見せた時と同じ。ヒーローにはやっぱり笑顔だ。

忍耐を基とする勇気ほど高尚な美徳はない エラリー・クイーン「Xの悲劇」

賢人イーストウッドが愛でる精神。必要以上に感情を動かさずに、それでいてよきものは伝播するとでも言いたげな人間性への深い信頼があった。

⇒エアバスA320の顔ってこだまみたいでかわいいよね
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