TAK44マグナム

RE:BORNのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

RE:BORN(2015年製作の映画)
4.9
最強。


俳優を引退し、アクションコーディネイターや忍者として活躍を続けているTAK∴(坂口拓)の復帰第一作。
近接戦闘に特化した戦術格闘技である「ゼロレンジコンバット」を一年間修行しての、まさしくタイトルの通り「リボーン」を果たした邦画界最強の男(これを観たらそう言っても差し支えないと思います!)が200人の特殊部隊員を全殺しするという、悪魔的な魅力を備えたコンバットバトル映画であります。
そう、本作はもはやアクション映画の範疇には収まりきらない、本格的すぎる近接戦闘映画なのです!


かつて「ゴースト」と呼ばれ、数多の戦場で恐れられた男、黒田敏郎。
上官である「ファントム」が幼い子供たちを洗脳し、兵士へと仕立て上げていることに反発した敏郎は部隊を壊滅させ、消えた。
死んだと思われていた敏郎だが、ひっそりと北陸の地に身を隠していた。
唯一「世界」と繋がっている証明となるのか、その傍らに一人の少女サチをおいて。
深く刷り込まれた戦闘本能を抑えながらコンビニ店員として暮らす日々であったが、ついにファントム率いる特殊部隊が敏郎を処刑するために現れる。
サチを誘拐され、敏郎は彼らとの全面対決にのぞむ。
戦いの中にしか「生」を感じることの出来ない者たちが、いま幽玄なる樹海を血に染めながら激突する・・・・・!


ストイックでノワールっぽい前半から、中盤以降は激しくスパルタンなバトルにただただ明け暮れる構成。
街中での刺客たちとの戦い、そして大自然の中、200名規模にものぼる特殊部隊との死闘が、アグレッシヴなカメラワークで描き出されます。

まず、映画としては少々いびつであることを承知した上で鑑賞するべきで、娯楽性重視のアクション映画では無いことはただならぬ雰囲気から察することが出来るかと思います。
物語は渋いがあってないようなものだし、動けることを第一としてキャスティングされている事から演技が拙く見える(ライバルキャラのアビスウォーカー役の稲川義貴氏に至ってはゼロレンジコンバット創始者にして本物の戦技アドバイザーであり本職の俳優ではない!)、とにかく戦ってばかりでクドい・・・などなど、観る人によっては問題点が多々ある映画にしか映らないかもしれません。

BUT!!
しかし、そんな事は「どうでもいい」のです!
細かいことなど気にせず、未知の近接戦闘を映画として観ることができる意義を噛み締め、かつてない神速アクションに心を踊らせれば良いのです!

剣術やナイフ術、ムエタイや古武術といった格闘術、果てはシステマやコマンドサンボ等の戦術格闘技まで融合させた「ゼロレンジコンバット」を用いたバトルアクションは、どこを切り取っても圧巻の一言!
極限まで無駄をはぶいた動きが、一瞬にして敵兵の命を奪います。
何がなんだか分からないうちに数人が制圧されてゆく様は、あまりにも速すぎて目で追えるレベルではありません。
まるでブルース・リーを初めて見た時のような衝撃的な体験であり、日本刀のごとき鋭い切れ味が、それまでのアクション映画を遥か後方に追いやってしまったかのよう。
「人を殺すこと」だけを目的として研ぎ澄まされてきた技術とは、動きだけでここまで冷たさを感じさせるものなのかと、観ていて驚きの連続でした。
戦国時代の剣客にも通じる、まさしく殺人機械。
いかなる時も死と隣あわせだからこそ到達できる凄みが、演技だと分かっていてもビンビンに伝わってきて、恐ろしくヘヴィな鑑賞体験となりました。
もし、実際に対峙したとしたら、きっと対峙したことも認識できないうちに息の根をとめられているのだと思うと震え上がる他ありません。


なにしろ動きが最小限のため、画面映えとしては派手さが足りないのは仕方がないこと。
なので、やはり従来の「アクション映画」の枠を超えた「近接戦闘映画」として観るとしっくりくると思います。
それを地味としか捉えられないのなら、それは本作と肌が合わないということでしょうから他のアクション映画を楽しむのが吉です。
分かりやすく例えるなら、ブルース・リーとジャッキー・チェンの違いというか、どれだけ実戦的な映画かどうかでしょう。
自分の身体を張ってアクションを演じるジャッキーが劣っているという意味ではありません。そもそも違う次元で語られるべきだと思うのです。

こんな映画が日本から生まれてしまった事実!
おそらく、海外での方が遥かに評価されるはず。TAK∴が映画関係ではなく、モノホンの軍関係者から誘われたという話も頷けます。

TAK∴だけではなく、もちろん他も動けるキャストが大量投入されており、三元雅芸や屋敷紘子などいつもの常連俳優から、アイドル女優からの脱皮を目指す篠田麻里子が超限定空間での坂口拓とのバトルを魅せるなど、新鮮なサプライズもふんだんに用意されております。

一言の台詞もなく淡々と襲い来るいしだ壱成、戦場での死を哀願する斎藤工などもかなり良い味わいで、短い出番ながらも確固たる存在感を発揮。
黒幕となるファントム役には、スティーブン・セガールなどアクション俳優を多く担当する声優として著名な大塚明夫が抜擢され、ある意味、TAK∴VSセガールという夢の日米最強無敵対決が楽しめるのも素晴らしいサービスじゃないですか!
(ナレーションの武田梨奈も顔出し出演していたらなぁ・・・)

‪近距離どころか背後からの銃撃でさえ避けてしまうのはさすがに
やり過ぎな気もしましたが、規格外の戦闘能力をビジュアル的に印象づけるにはそのぐらいやってしまえ!という勢いが、常識などというくだらない枠組みをいとも簡単に超えていて痛快です!
「ありえない」は空想から生まれる映画の専売特許。
ファンタジーとリアルの狭間に「ゴースト」は存在するのです。

「リボーン」は、間違いなく邦画アクションの新たな扉を開いた映画だと思います。
後に上映館が増えたとは言え、当初は単館レイトショーのみの公開だったとは何という損失でしょうか?(おかげで劇場鑑賞は叶いませんでした)
こういう「男の映画」を拡大公開できるようになってほしい!


・・・・・戦いはまだ、始まったばかり。
まずは本作を体感して、来たるべきネクストステージに備えよ!
そう、まだ遅くはないッ!



セル・ブルーレイにて