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リップヴァンウィンクルの花嫁のyのレビュー・感想・評価

5.0
この映画が、自分でもなんでこんなに、と思うくらいに好きだ。なんでかわからないけどこの映画を観終わったあと現実に戻ってくると、この世界がそれまでよりも美しく感じられる。窓からさす明るい光をただぼんやりと眺めるだけで、「きれいだなあ」と呟いている自分がいる。

安室の得体の知れなさ然り、どこか不思議で奇妙で、いつもとはほんの少しだけずれた世界を眺めているみたいだ。でも流れに流れてその世界に迷いこんだななみが辿り着いた先に見た新しい部屋からの澄んだ景色が、望んでいたにせよ望んでいなかったかにせよこの上なく心地よく美しく思えるのだから、その「ずれ」の中にこそ愛すべき真実があるように思える。
「この世界は本当は幸せだらけなんだよ」
予告にもでてくるこの言葉どおり、ほんとうは、幸せだらけで、泣きたくなるくらいに美しいのだと。
むしろそちらが本質で、ただ私たちはそれを忘れているだけ、必死で感じないようにしているだけなのではないのか、と。そんなことに気付かせてくれるましろの言葉が、肌がビリビリ灼けるほどに脆くて繊細で胸に突き刺さる。

「しきたり」だからというだけで仕方なくなぞる文化、心の入っていない茶番劇、果たして意味がありますか、と、間接的にだけどそういうことも描いてくれているのかな。ドレスを着たふたりの心底楽しそうな顔が、前半との対比にもなっていてとても素敵で…まぶしい。
あとおかあさんとのシーン、ふしぎな浄化作用がすごくて心が洗われた…。
さいご、いっそ見落としてしまいそうなほどにさりげなく、透明な輪っかを眺める彼女のその仕草がきれいだった。これからもきっと灯台のようにやさしいひかりで照らし続けてくれるのだろう。
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