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ミッション:インポッシブル/フォールアウトのnetfilmsのレビュー・感想・評価

4.1
 冒頭、イーサン・ハント(トム・クルーズ)が見た夢の中に、2人のかって知ったる人物が登場する。1人は『ミッション:インポッシブル3』に登場した運命の女であり、もう1人は『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』に登場した心底厄介な敵役に他ならない。彼を殺さなかったことが元で、イーサン・ハント率いるIMF(Impossible Mission Force)チームは最初から窮地に立たされる。1996年のシリーズ開始から22年、全世界で28億ドルもの興行収入を稼ぎ出したトム・クルーズのドル箱ヒットシリーズに、監督であるクリストファー・マッカリーの判断は6本目の今作でとりあえずの集大成を迎える。世界を危機に晒すほどの盗まれた3つのプルトニウムはIMFチームの目前でイーサン・ハントの手の中からこぼれ落ちる。事件の裏側には、シンジケートの⽣き残り勢⼒が結成したアポストル(神の使徒)が関与しており、⼿がかりはジョン・ラークという正体不明の男の名前と彼が接触するホワイト・ウィドウ(ヴァネッサ・カービー)と呼ばれる謎めいた⼥の存在のみである。だが今回のミッションに対しイーサンの動きを不服とするCIAは、敏腕エージェントのオーガスト・ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)を監視役に立てる。

 トム・クルーズの全治9ヶ月の大ケガは、結果としてトム・クルーズという稀代のスターの新たな伝説を作ったに過ぎない。心底厄介な敵役とオーガスト・ウォーカーの罠に嵌められた彼の姿は、イーサン・ハントという単なるスパイ=虚像のメタファーに過ぎず、泳がせていたはずのイーサン・ハントの強い陰影により、敵役たちはかえって窮地に陥る。その辺りの御都合主義的な脚本は賛否両論あるだろうが、21世紀のドル箱スターであるトム様の魅力は、56歳になった今も少しも揺るがない。グリーン・バックに頼らないひたむきな自己言及性こそが21世紀のアクション活劇の醍醐味であると熟知しているトム様は、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』の超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」よじ登りや、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』のエアバスA400Mアトラス輸送機のドアへのしがみつき以上の更なる危険スタントに打って出る。

 BMW M5 セダンによる狭い石畳の路地裏の150kmカー・チェイスはジェームズ・マンゴールドの2010年作『ナイト&デイ』を凌ぐほどであり、危険なスカイ・ダイビングから、難易度の低いはずの屋上飛び越えで大ケガを負ったのは何とも皮肉めいている。呪われた映画になり兼ねない映画は然し乍ら銀幕スターとしてのトム様により完全に回復する。特にクライマックスの谷ギリギリのヘリコプター飛行と2000m級の山でのしがみつきはトム様も名演技だが、受け手に立つヘンリー・カヴィルの屈指のアクションも評価されねばならない。
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