せんきち

エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?のせんきちのレビュー・感想・評価

3.3
DVDにて。2001年に破綻したエネルギー企業エンロンのドキュメンタリー。ライブドア事件の時に日本版エンロンと評されたが、改めて見てみると格が違う。スケール、悪質さ、政治との癒着っぷり全てエンロンのぶっちぎりである。

電気代をつり上げるために意図的にカリフォルニアで停電を起こすなんてショッカーでもしないような事をするし。当時ニュースで知っていたが映画で見ると、とても現実に起こった事件とは思えないのだ。あまりにも悪質すぎて。

一般市民、株主、社員等々多くの人達に被害を与え、自分たちだけは利益を取れる神経って何だろう(歴代CEOは破綻前に自分の株式を売り抜けている)と思う。劇中で紹介された「ミルグラム実験」がその理由の一つだろう。

ミルグラム実験↓(Wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%E5%AE%9F%E9%A8%93

人は権威ある者からの命令には間違っていたとしても従ってしまう性質を持つ。しかも、それを拒絶する倫理観は次第に麻痺していく。

エンロンの場合は不正に関わった人間が多すぎた。元会長のケン・レイを始め元CEOジェフ・スキリング、アンディ・ファストウ、エンロンの格付けに関わったメリルリンチ、ゴールドマン・サックス等の投資銀行、証券会社、意図的に株価をつり上げたトレーダー。
巨大な悪に加担していると思いつつも責任が分散されているため、誰も自分が悪いとは思わなかったのだろう。全てが破綻するまで。

この映画はエンロン破綻の背景を描く一方、人が集団で悪事を起こしてしまう理由を示唆しているように思う。この映画で断罪されている人達に異常者や極悪人はいない。ごく普通の(むしろ頭の良い)人達だ。しかし、普通の人達の集団こそ最も恐ろしい事をするのだ。これも集団心理の一例なのかも。
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