【光と闇に潜む亡霊】
アピチャッポン・ウィーラセタクンが監督を務めるナブア村の少年達が炎のボールを蹴り、スクリーンを燃やす短編。
正直1回だけでは本作を素直に受け止める事は難しいと思います。
激しい稲妻。その音だけが響き渡る冒頭。これから何が始まるのか。何を表現しているのか。1つ1つに深い意味がありそうで非常に興味深い10分間。その後、蛍光灯の明かりに照らされたナブアの夜に少年達が炎のボールでサッカーに興じる姿が終始描かれ、そのボールはスクリーンに火が移り燃えてしまう……………。
夜の暗闇に火の粉が上がる。人工の光は蛍光灯とスクリーンでの落雷やプロジェクターの電光のみ。
そこに重なる少年達。ロングショットで撮る少年達の顔の表情は愚か彼らの情報は殆どない。ただ炎のボールを蹴っているだけなのに何処か神聖なるものを感じてしまう。
アピチャッポン作品を素直に観ると退屈かもしれない。『トロピカル・マラディ』『世紀の光』『光の墓』含め、通常の映画の見方からは、我々が一歩離れて観賞しなければならない作品。彼の映画はぼぉーと眺めるだけでも〝映像〟として目に焼き付く。
アピチャッポン同様、タイの監督でペンエーグ監督作品が世界に知れ渡ってきているという事なので彼にも注目していきたい。