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神様メールのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

神様メール(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

最高だった。ジャコ・ヴァン・ドルマル監督がどストライクなのかもしれない。

大好きなのだが、何が好きなのか説明するのが難しい。まず主人公の少女エアが神様の娘であるという突飛な設定と、それをさらりと描いてしまう上手さ。「実は神様はパソコンで夜な夜な世界の設定を打ち込んでいる陰湿で最低のクソ親父だった」「キリストは主人公の兄だった」「世界への移動手段は洗濯機」という冒頭は掴みとして完璧過ぎる。

そうして次々と登場する彼女の"使徒"たちの、やはり突飛な設定とそれぞれが持つ個性の美しい輝き。エアが彼らにするアドバイスも合ってるのか合ってないのかよくわからないが可愛いから許せちゃう。子供だから詳しいことはよくわからない、というバランス感が素晴らしい。エアは一人ひとりに彼らの"音楽"を伝え(これが既存の具体的な曲名であるというのもまたセンスが良い)、それを知った彼らは自分に正直に行動していく。鳥に「飛べるのになぜ公園から出ない?」と質問したおじさんに「あなたこそなぜ?」と鳥が答えるエピソードが本当に好き。

こんな"ほんわかほっこり映画"みたいなタイトルとポスターで、結構えげつないユーモアをぶちこんでくるので油断ならない。性的な要素も強いし。(自称"性的妄想者"も出てくる!スーパーの女性が全員全裸になるシーンの鮮烈なこと。)寿命がまだまだ先だからって自殺行為を続ける動画配信者も笑わせてくれる。あいつエンドロールの最後で自爆したけど、さすがに大丈夫か?本当に笑いがブラック過ぎる。

エアに(かなり適当に)選ばれた使徒たちは自らの寿命を知ることで"諦め"へと生き方を変えるのだが、エアと出会うことで"自由"へとまた変化していくのだ。鬱屈していたおばさんが最終的にゴリラと恋に落ちるのは最高すぎてニヤニヤしてしまった。そりゃしょうもない旦那より一途に自分のことを想ってくれて力も強いゴリラの方が良いよね!

ラスト、刺繍好きの母(女神)によって再構築される世界の美しさといったらない。シニカルでブラックでチャーミングな最高のファンタジー映画。大好き。
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