ブタブタ

ダンケルクのブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

ダンケルク(2017年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます


僕の奥さんが声優の吉野裕行さん(代表作『弱虫ペダル』の荒北靖友など)の大ファンでライブやイベント等に付き合わされているのですが吉野裕行さんが所属する音楽レーベル「Kiramune」の吉野裕行・浪川大輔・柿原徹也の3声優によるユニットの台湾でのライブ(公演名『VERSUS』)の映画館でのライブビューイングに行く事になりまして、丁度その日はサービスデーだった事もあり本当は東京・名古屋だけで特別上映される35mmフィルム上映を見たいと思っていたのですが皆さんの続々上がるレビューを見て我慢出来ずIMAX2Dでライブビューイング前に『ダンケルク』鑑賞しました。

ものすごく長い前置きですがダンケルクと関係ない事もなくてライブビューイングで唄った1曲がまるで『ダンケルク』の世界感そのままで時間差でエンディングテーマを聞いた様な感覚になり思わず涙が流れたのでした。
その曲がこちらです。
本当に名曲なのでぜひとも一度聞いて見てください。
どうぞ↓

『飛行機雲』 柿原徹也

言葉にも出来やしないくらい 
退屈な日々過ごしてた
物足りない もう足りないなくて 
僕には何か物足りなくて
出会いと別れ繰返すたび 
孤独感に囚われていた
もう何度諦めたんだろう 
どれくらい傷つけあっただろう
 
Wow 水平線 Wow 指差せ

大切な人の言葉とか 
いがみ合った人の言葉とか
雄弁な偽善者達とか 
僕の心惑わせていた
嫌んなるほど傷んだ心 
癒してくれる場所があるなら
あの日見た空の青さに最後の望みを託してるんだ

あの雲の先 旅立つ僕は 新しい場所に向かう 飛行機雲
この空の果て 消えてしまうまで 指差した方角へ進んで行く
 
Wow 水平線 Wow 指差せ
 
夜に消えた夢のカケラたち 
朝になれば忘れ去られて行く
何万回見ていたはずの夢は夢 
日々消え去っていく
無関心ほど無関係になり無理して笑うこともないけど
朝焼けが綺麗だから最後の望みはまだそこにあんだろ
 
遠くの風を感じたならばどこまでも飛んでゆける飛行機雲
悲しみ全て連れて行くから指差した方角へ進んでいく
 
世界中の涙が流れ落ちて土に染み込み 雨雲になり
その涙の雨がまた降り注いだ
優しさだけじゃもう何も守り切れない
 
あの雲の先 旅立つ僕は 新しい場所に向かう 飛行機雲
この空の果て 消えてしまうまで 指差した方角へ進んで行く

 Shake Hands ここでサヨナラを言うよ
 Shake Hands 悲しみから旅立つよ
 Shake Hands ここでサヨナラを言うよ
 Shake Hands 新しい場所へ旅立つよ
 Wow 水平線 Wow 指差せ

。゚(゚ `Д)ノ。゚ヽ(  )ノ゚。ヽ(Д´ ゚)ノ゚。。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚ウワァァァァァン!!

「水平線指させ」は正に『ダンケルク』の世界を一言で表している様でライブで聞いてる時は鳥肌が立ちました。

「朝焼けが綺麗だから最後の望みはまだそこにあんだろ」は主人公の名も無き相棒の言葉にも思えます。

「この空の果て 消えてしまうまで 指差した方角へ進んで行く」はあのパイロットの最後。

「夜に消えた夢のカケラたち 
朝になれば忘れ去られて行く」は海の藻屑と消えた無数の兵士たち。

そして「あの日見た空の青さに最後の望みを託してるんだ」は主人公の兵士。

こんな偶然もあるんだな、と映画とライブビューイングが一体となった不思議な体験でした。

そして肝心の『ダンケルク』ですが僕には合いませんでした(笑)

うーん...

とにかくものすごい事をクリストファー・ノーラン監督がやってる事は頭では解っても、それはそれとして映画としてあんまり面白くないと言いますか、この感覚は『バードマン』のイニャリトゥ監督作品にも感じていて最新の技術や映像表現、実験的先鋭的、映画の最前線を行ってるのは自分如きボンクラにも分かるのですが映画として面白いかと言うと別問題で。

『スターウォーズ・ローグワン』が最新技術で再現した「スターウォーズ(1作目)の世界」なら『ダンケルク』は最新の技術で再現した「第二次大戦の世界」で、再現フィルムならぬ「再現現実」とも言うべきリアルな世界何ですけど、両者に共通するのは映画と言うよりゲームの世界の様な映像がクリアー過ぎてそれがまたヴァーチャル世界に見えてしまって映画としての面白さより「スゴイ技術」を見せるのが目的の様な映画そのものの面白さがあんまりない...と言う感想です。

姿の見えない敵の恐怖と川下り(海ですが)と約束の地(ここでは母国)を目指す地獄巡りで思い浮かべたのがウェンディング・レフン監督『ヴァルハラ・ライジング』で現実と幻想が混然となって、ダンケルク撤退戦のマキシマムな視点と兵士・パイロット・船長の3者から見たミニマムな視点が必ずしも同一の物でなくて『この世界の片隅に』と同じバックの凄まじい情報量の中で極々個人的な物語が進む、個人から見た幻想の戦争、内宇宙(インナースペース)的なものも描かれると勝手に思ってました。
1週間・1日・1時間が同時に進みつつ現実(即ち映画でなく見てるこっち側)の世界では同じ時間でラストは『インターステラー』みたいに三つの時間軸がメビウスの輪の様に有機的に結合してアッと驚く結末になると思ってたのです(←何言ってんだ?)

ガス欠のスピットファイアがプロペラが停止してグライダーの様に滑空してるシーンが、それまではあんなにリアルだったのに急にCG感丸出しの「絵」みたいになった時、これはもしかしてパイロットは既に死んでいてスピットファイアは涅槃(ニルヴァーナ)を飛んでいるのでは?と思ったのですがそんな事はありませんでした。

それからここまで血が出ない戦争映画って無いと思います。
「血・臓物・ナチス」のボンクラが大好きなモノ(笑)一般的にはあまり見たくない色々と面倒なものが画面に全く出て来ないのも印象的で、メインの敵である独軍の爆撃機ハインケルと戦闘機メッサーシュミットも殆ど遠景でパイロットなどが映ることも無く最後の方に出てくるドイツ兵士もピンボケと言う念の入りよう。

『野火』のゾンビの如き、幽鬼の如きそこだけ真黒な日本兵たち『ハクソーリッジ』の誰も殺さない衛生兵デズモンドなど映画としてのキャラクター「本当だけど嘘みたいな人間」がいっさい出て来ないのも物足りなかった。

それと救助船の中で「温かい紅茶」と「ジャムパン」があるのが非常に情けない気持ちになりました。
日本政府が《英霊》と呼ぶ戦死者230万人の6割は「餓死・病死」と言う事実。
そりゃあ負ける、と。

兵士・パイロット・船長の3人のキャラクターも名前が無いところとかまるでゲームのそれぞれのルートの「アバター」みたいでそんなとこもドラマの希薄さに繋がってると思います。

IMAXの音も映像も凄かったですが始まる前に初めてIMAXによる大画面で『SW最後のジェダイ』『ブレードランナー2049』『ジャスティスリーグ』の予告三連弾を見た時が正直気持ちのピークでした。
ブタブタ

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