Yoshishun

映画 聲の形のYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「君に生きるのを手伝ってほしい。」


原作は未読m(__)m
さらには、約3年ぶりの日本アニメw

「君の名は。」なんて作品もありますが、残念ながら惹かれたのはのは圧倒的に「聲の形」。若者の心を鷲掴みにすると云われる「君の名は。」に全く鷲掴みにされず……ちょっと自分でも悲しい……w

ほのぼのアニメをお得意とする京アニが、障がい者を取り扱った作品でありますが、正直製作側が製作側なので完全に軽いタッチのいつも通りの作風でやってくると思ってました。なにせ、監督もけいおん!の人でしたからね。

しかし、蓋を開けてみれば、もうね、…………重い。軽い会社がめっさ重い作品を作ったことが驚きでした。これはある意味成長に近いものを感じました。けいおん!やたまこのようなゆるかわアニメを作っていた会社が、ズシンと心に響く重い作品を作ったことに意味があると思います。

物語は、小学時代から展開されていきますが、やたら時系列を滅茶苦茶にしてくるので、最初は少し解りづらいです。しかし、観ていく内に、主人公が一体どの時間に、何をしてしまったのか?という過程が明らかになっていきます。その手法は上手いと思いましたね。

そして、西宮硝子との出会いによって、少しずつ変わっていく主人公の立ち位置……ガキ大将という最高位(?)から一気にいじめられっ子に叩き落とされる。ほんのささいなことで自分の人生を大きく変えてしまうんです。自分の立たされた最悪な状況下で生きることの辛さがよく表現されてます。教育現場ではカーストが全てのようでした。また周囲の顔、声の全てが自分への罵りに感じられる。聲の形=声の形というタイトルなのに顔という話題が出てくるのは変かもしれませんが、他人にある×マークが全てを表してます。主人公にとって友達ではない人達の表現も漫画が原作だからこその味わいがありました。そして、主人公の成長を最も物語る感動のラスト…………いやー、泣きましたwwそこに行き着くまでの過程も見事で、人を「信じる」ことの大切さも学べる。

そういえば、京アニでは珍しく、直接的な恋愛を描かないことにも好感を持てました。あくまでも、何かしらの障害や悩みを抱える人達の友情物語だと思うので、恋愛パートを引っ張ると、作品全体のバランスがおかしくなると思います。簡単なことでさえもうまく伝えられないもどかしさ、ちゃんと理解できない悔しさ……当たり前のことができない辛さが本作の魅力の一つです。

次に映像に関してですが、相変わらず背景は化物級の美しさでした。日常的な風景や朝、昼、夜の描写も見事の一言。基本、夕暮れ~夜にかけて、物語の大きな変化の前兆であるようでした。思い返せば、西宮との喧嘩や西宮の飛び降りシーンはこの時間帯でした。耳が聞こえない=声が届かないのに加えて、夜の暗さから姿もよく見えないという恐ろしさもあります。劇中のシーン毎の明るさを変化させていたのも、評価に値すると思います。

次に声優の話ですが、なにせトド松こと入野自由、西宮硝子役の早美沙織の熱演に尽きます。本当にこの二人の演技は素晴らしい以外の言葉が見つかりません。キャラに命を吹き込んだ彼等の偉業は、もっと称えるべきでしょう。他の声優さんたちも良かったです……が、松岡美優の声が残念ながら好みではなかったwどうも少年らしくないというか、素の松岡じゃん?と思いました。

不満な点を他に挙げると、まあ時間の都合上仕方の無いことかもしれませんが、主演二人以外のキャラをもっと掘り下げてほしかったとは思いました。また、時系列がちょっと解りづらいのも難点。あと気になったんですけど、中学時代のエピソードって原作ではちゃんとあるんでしょうか?読んだことある方は是非教えてほしいです!!!

しかし、本作は将也と硝子二人の視点によって描かれる青春物語。上記のような不満なんて無くなってしまうほどの、真っ直ぐで、ほろ苦い青春。敢えて余計な伏線張らずに二人の物語であると割り切ったことで、最高と思える一本に出会えたような気がします。


声を届けたい、自分の想いをちゃんと伝えたい……若者の苦悩をこれでもかと丁寧かつ繊細に描いた京アニの最高傑作。リアルなテーマで問い掛けてくる、アニメ映画を愛する全ての人に観てほしい作品だと断言します。

ちなみに、わざと日本語字幕版で見ました。タイトル通り、声が形(字幕)として伝わるだけでなく、何気ない音や心の声も丁寧に表現できていました。今、彼は何を想っているのか?〈鼓動〉という字幕とともに、観客も鼓動します。この日本語字幕版は本作ならでは、むしろ本作のためののバージョンだと思います(^.^)

P.S. aikoは好きではないが、主題歌は最高でした(*´ω`*)

P.S.S 現時点(9/26)で2016劇場鑑賞作品暫定1位でーす♪
Yoshishun

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