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ランデヴーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ランデヴー(1985年製作の映画)
3.9
 フランスの片田舎出身の女優志願の娘ニーナ(ジュリエット・ビノシュ)は、劇場の屋根裏部屋を借りていたが、1人で暮らしてみたいと考えていた。部屋を借りる時世話になった不動産屋のポーロ(ヴァデック・スタンザック)のはからいで、彼の家に案内されたニーナは、そこで退廃的な同居人カンタン(ランベール・ウィルソン)と運命的な出会いを果たす。今作はニーナとカンタンとポーロの三角関係の物語である。ビノシュは誠実でどこか生真面目なポーロに求愛されるが、退廃的で破滅的などこか冷たいイメージのカンタンと関係を持ってしまう。カンタンとポーロは実に対照的な人物として描かれる。ポーロは不動産屋に勤務する実直な男として描かれるが、カンタンはすさんだポルノ演劇の役者として生計を立てている。この三角関係の描写は非常に寓話的で抽象的な性質を帯びていると言ってもいい。今作においてこの三角関係の描写はヒロインの成長を促す重要なきっかけを与えているに過ぎず、ジュリエット・ビノシュの女優としての成長にこそ今作の主眼はある。

 劇中、夢を持ってパリを訪れたビノシュは順調にキャリアを築くが、カンタンとの出会いから徐々に堕ちていく。端役としてキャリアを掴んだ劇団を辞めてしまい、失業し夢破れる寸前に至ったヒロインが愛するカンタンの交通事故に見せかけた自殺を持って、自分の人生を力強く歩き始める。そのきっかけになるのが、ジャン=ルイ・トランティニャン演ずる演出家との出会いであり、『ロミオとジュリエット』のオーディションを受けることだろう。愛する我が娘を失ったジャン=ルイ・トランティニャンが娘の演じたジュリエット役をジュリエット・ビノシュに演じさせることで、2人は何らかの贖罪の感情を共有していると言ってもいい。ビノシュはこの翌年、レオス・カラックスの『汚れた血』で主演を務め、国際派女優としての華々しい成功を収めていく。テシネの弟子として寵愛を受けたオリヴィエ・アサイヤスは今作に共同脚本として参加した翌年、ポーロ役のヴァデック・スタンチャックを主演に据え、処女作『無秩序』のメガホンを取る。2人が再会を果たすのは2008年の『夏時間の庭』まで待たねばならなかったが、『夏時間の庭』の時、アサイヤスには既にジュリエット・ビノシュ主演で映画を作る構想があった。
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