TAK44マグナム

マーダー・オブ・キャットのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

マーダー・オブ・キャット(2014年製作の映画)
2.9
気ままな猫は、射抜かれた。
誰に?


サム・ライミ製作によるミステリーコメディ。
監督は、なんとサム・ライミの奥さんだったりします。

なにかと暴走するボンクラで負け犬な主人公を、ある理由から目こぼしする保安官役をJ・K・シモンズが好演。
厳しい役も優しい役も、どちらも似合う人ですな。


フォロワーさんがレビューで仰ってましたが、これは「アンダー・ザ・シルバーレイク」の元ネタなんじゃないですかね?
その指摘が気になったので観てみたいと思ったのですが、たしかに構造がよく似ています。


マザコンのオタク主人公の愛猫が何者かによってボーガンで射たれ、殺されてしまいます。
愛猫の仇をうつ為に主人公は素人探偵となり、保安官の制止もきかずに勝手に捜査を開始。
しかし、愛猫そっくりの猫を探している旨の張り紙を発見したことから、事態はまるで想像だにしなかった方向へと転がり始めるのでした。


意味もなくスケールが大きかった「アンダー・ザ・シルバーレイク」と比べるとミニマムなお話ではありますが、オタク主人公が小さな事件を追っているうちに事が大きくなってゆくという物語の構造は似通っていますね。
ただし、オタク趣味が役にたつわけでもなく、あちらの主人公ほど世間慣れをしているわけでもなかったり、事件がちゃんと解決する事、そして王道的な恋愛要素が強めな事がかなり大きく違っている点だと思います。

ギアがはいって、話の展開が加速し始めてからは観る者の興味をグイグイと引きますが、意外と矮小な事件だったりするのは良しとしても、終盤における話の畳み方がやたらと雑なのはどうした事なのでしょうか。
で、結局何なのよ?と、苦笑い。

まぁ、自らが自分の「役柄」を決めつけちゃ先が無くなっていかんのではなかろうか?というメッセージを伝えたいのかなと思ったのですが、中盤でのグレッグ・キニア演じるモールオーナーの出番が少ないので、なんだかとってつけたような事件の終焉に思えて仕方がありませんでした。
もっと主人公と絡ませて対比させた方が分かりやすかったというか、怪しい東洋系の店員に主人公を翻弄する役割を担わせるシナリオがあざといというか。
メチャ器用で几帳面なあの店員は結局なんであんなになっちゃったの?

しかし、髪を切ってイケメン化したからって、「負け犬役しかできない負け犬」から簡単に脱却できないところは良かったと思います。
やはり、ちゃんと行動してこそ、初めて負け犬じゃないことを証明できるわけで・・・

本作のシナリオはブラックリスト(未製作のものが集められるリスト)にリストアップされていたもので、それなりに評価も高かったはずなのに、いざ映画化してみるとミステリーとしてもコメディとしても些か中途半端な仕上がりと言わざるおえません。
もうすこし巧くまとめてくれるとラストに感じるカタルシスも倍増だったのにな。
でも、こういう軽いミステリーが好きな方には、かろうじてオススメ出来るぐらいの面白さはキープしていますよ。
ただ、合わない方には徹底的に合わないんじゃないかなぁ?
そんなところも「アンダー・ザ・シルバーレイク」に似ていますね(苦笑)。


アマゾンプライムビデオにて