爆裂BOX

ファンタズムの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

ファンタズム(2014年製作の映画)
4.0
息子を亡くした一家。一年後、息子にどうしても会いたい母親は降霊師に教えられたあるトンネルに向うが…というストーリー。
不気味なトールマンと殺人シルバー・スフィアが登場するカルトホラーシリーズではなく邦画の心霊映画です。
物語は息子を亡くした悲しみに暮れる一家の母親が、息子にもう一度会う為に降霊師に教えられたトンネルで降霊術を行うも、呼び出されたのは息子の霊だけでなく家族の日常に異変が起きていく…という物です。
かなり低予算で作られた作品だと思うんですが、幼い息子を失い、その悲しみを抱えながら日常を送っていく家族のドラマが丁寧に描かれています。家族の食事風景も息子がいなくなった後は、一見普通そうに見えて何か爆発しそうな空気が感じられて静かな緊張感がありますね。息子の書いた家族の絵と共に「母親」「姉」「父親」と章立てて進んでいく展開も楽しめました。それぞれの章でそれぞれの悲しみと苦しみ、それに対する対処の仕方が描かれてるのも良いですね。
恐怖描写も派手さはないですが(予算の関係もあるんでしょうが)家の中に出来た水たまりや足跡、コインランドリーにたたずむ赤い服の女、テーブルの下から掴む手やカーテンに隠れてこちらを見る母親など静かに日常が浸食されていく恐ろしさとJホラーならではのおどろおどろしさを感じさせてくれて好印象です。カメラ映像の子供の顔が歪むシーンは定番な印象もありますがやはり気味悪いですね。
役者陣もそんなに見たことない人達ですが、皆さんしっかり演技できる人達で占められてたのも良かったですね。姉役の末永みゆちゃんは映画初出演みたいですが、そんなに演技に違和感感じなかったし中々可愛かったです。
ラストに明らかになる息子の死の真相とその後の父親の決断は切なさ爆発ですね。「しっかり家族を守る」と息子に言っていたことをこう使ってきますか。バッドエンドっちゃーバッドエンドですが、仕事で息子とあまりいられなかったけど、これからは一緒に居られると考えればハッピーエンドとも捉えられるかな。最後に抱き合う親子の姿も印象的です。死んだ子供の事を忘れないのも大切だけど、それに囚われすぎて生きてる子供をないがしろにしちゃ駄目だよね。
地味で静かでほとんど知られてないマイナーな作品だと思いますが、切ない要素もある心霊ホラーで楽しめました。