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人魚姫のsomaddesignのレビュー・感想・評価

人魚姫(2016年製作の映画)
5.0
大好きチャウ・シンチーのファンタジーラブコメ。
出来良いトコも悪いトコも全部魅力に変えちゃうシンチー節炸裂。
チャウ・シンチー版「スプラッシュ」

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若き実業家リウは、美しい自然保護区域・青羅湾を買収。リゾート開発のために海中に設置した超強力ソナーで海洋生物を湾から排除し、埋め立て許可を取り付ける。環境破壊のせいで行き場を失った“人魚族”は、難破船に逃げこみ、絶滅の危機に瀕していた。幸せな日々を取り戻すため、リーダーのタコ兄の指揮のもと、一族は「リウ暗殺作戦」を決行する。可憐な人魚シャンシャンを人間に変装させ、リウへの急接近を試みるもあえなく失敗…。だがリウは、横暴な女性投資家ルオランへのあてつけにシャンシャンをデートに誘うと、純真なシャンシャンに心癒され、急速に惹かれていく。おカネだけが愛の対象だったはずのリウと、なぜか彼を殺す気になれないシャンシャン。募る思いとは裏腹に、人魚族は欲に駆られた者たちによる激しい武力戦に巻き込まれていく─!

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チャウ・シンチー監督作はいつも人生に行き詰まってる人や、
才能はあるのに驕ったり燻ってる人が主人公。
社会の底辺で上手くいかない人生に絶望してたり、
金も才能もあるのに心を閉じてて没落しちゃうような
ダメダメなオッサンが、無私の慈愛に触れて人生を変える話ばかり。
シンチー映画にどうしても惹かれちゃうのは、
このダメっぷりを決して上から目線で描くことなく
ダメを業として人間に寄り添って、誰でもありえる弱さとして描く。
それを救うのは同じく弱い人間の、自己犠牲に近い愛情表現が
主人公を開眼させて世界の尊さを知るような感じ。

自己犠牲でヒーロー/ヒロインの幸せを実現するのは
アンデルセンの「人魚姫」そのまま。
悲しくて切ない童話世界を現代的にブラッシュアップして
ドタバタでしょうもないギャグラブコメにしちゃう手腕はサスガ!
ショウ・ルオのタコ兄さんサイコーだし、
シンチー映画常連のオバチャン連中も相変わらずの相変わらずさで良かった!
この映画のためにオーディションで選ばれたヒロイン:リン・ユンも超カワイイ!キティ・チャンを見出したチャウ・シンチーが、また新たな才能を発掘したか。

ラブコメ部分は80年代の少年マンガそのままな
トボけたヒロインに心閉じた主人公が魅かれるベタベタさで
今見ると古臭くてしょうがないとか、
ショウ・ルオの芸頼りなコメディ部分はスベってる部分も多かったり、
今時どうかと思うようなCGの低クオリティっぷりもあって
万人にオススメできる映画ではない気もする。
数多い欠点を最終的に魅力にしちゃうのがシンチー映画の魔法っつーのか、
みうらじゅん大先生の言葉を借りるなら
「そこがいいんじゃない!」に尽きる。

粗末でも同じものを分け割って食べて心打ち解け合う…
フード大原則を抑えたシーンもサスガだし、
「ドラゴン怒りの鉄拳」から「ゲッターロボ」まで謎のBGMセンスも
とんちが効いてて大好き( ´ ▽ ` )
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