自宅で友人1人と。
2017年の洋画作品。
監督はダン・クワン。
あらすじ
無人島に流れ着いた独り者のハンク(ポール・ダノ「オクジャ」)は絶望から、今まさに自殺しようとしていた。その矢先、ハンクは浜辺に流れ着いた青年の死体を発見する。様々な機能を持ち合わせていたその死体は自らをメニー(ダニエル・ラドクリフ「ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡」)と名乗り、ハンクと共にハンクの故郷を目指す。
初めて知ったのは海外の映画サイトで。
そのパッケージの破壊力からなんだこれ!?と興味を惹かれ、「ダニエル・ラドクリフが死体役で相棒のポール・ダノと冒険を繰り広げる」っていう突拍子も無い内容にも大いにそそられ、公開を待っていたんだけど
あいも変わらず、地元では公開せず!!ということで、絶賛のレビューが散見する中、ようやくブルーレイで鑑賞しました。
結論から言えば…
これは、世間の評価を抜きにして観ても、個人的に大切な、そして愛すべき一本となった!!
まず、冒頭。というか今作において、絵的なエクストリーム感て言えば、最高到達点とも言えるシーン。
今まさに絶望から自殺を図ろうとするポール・ダノ演じるハンクがラドクリフ演じる死体のメニーと出会うシーン。
死体の特性に気付いたハンクが足取りゆっくり、自然とハミングを口ずさみながら、メニーに近づいていく。
ケツからガス(オナラ)を噴射するメニーにまたがり、大海原に乗り出すハンク!!
ハミングが次第に重なり、まるでハンクとメニーの気持ちの高鳴りに呼応するように大きくなっていき…
パッケージにもある力強い筆字でタイトル「スイス・アーミー・マン」バァン!!
なに?この謎の爽快感!高揚感!刺激的快感は…!!
これから始まる物語の幕開けに胸ときめかせずにはいられない!!
こういう日常から遠く離れた「非日常」を登場人物と共に体感することこそ、至上の喜びだ。
これだから映画を観るのはやめられない。
少なくともこのオープニングだけでも本作を観てよかったと思ってしまったんだ。
そこから、運良く流れ着いた島でメニーと共に行動するハンク。
「スイス・アーミー・マン」と題名にあるようにメニーが話が先に進むに連れて明らかになる多機能描写がことごとく面白い!!
前述の尻ジェット噴射から始まり、口から天然水や手刀チョップで全自動薪割りなどなど…!!
特に爆笑したのはチン◯レーダー!!
発想はどストレートの下ネタで馬鹿馬鹿しすぎるものの、クイクイッとモロ人形の忙しない動きでラドクリフのニワトコの杖が動き出す様に思わず笑ってしまった!!
ただ、なんだ唯のギャグ映画じゃないか!と思うことなかれ、根底にあるのはハンスとメニーの一種「ブロマンス」的な「青春」。
作中、キーとなるのがハンクの想い人、サラ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド「10 クローバーフィールド・レーン」)。
サラがいることでハンクは故郷へ帰る想いを強くし、メニーもその想いに呼応していく。
道中、初めてサラを見かけたバスの車内の情景を森の資材で再現するシーンは何だか幻想的でサラ役で女装したハンクとハンク役のメニーが人間と死体という生死の境を越えた友情を築くことで、徐々に、しかし確実にメニーの人間性や生気も高めていく。
やっぱり愛って、そして友情って偉大だ。
けど、そんな2人にとっての充実した時間はわずかだった。
実は当のサラは既に既婚者で、娘もいる。
野生の熊との戦いを経て、遂に故郷に帰りついた2人を待っていたのは、全く面識のないハンクに怯えるサラとその娘。
ここで魔法は解け、ハンクは行方不明者として保護、メニーは身元不明者として搬送され、疎遠となったハンクの父親(リチャード・グロス)とも会わずじまいで終わるまさかのバッドエンドで終わると思いきや…。
そこからの2人の逃走。
実は最初から最後まで狭い世界で行われていた2人の道中が明らかになる流れから事態は更に急展開。
そして、ラスト。
確かにハンクとメニーの珍道中は所詮、側から見れば紛い物の「ごっこ遊び」だったのかもしれない。
けど、ハンクにとってメニーは生きた友人だし、2人が歩んだ道のりも過ごした時間や想い出も全部本物。
海に帰るメニーとそれを見送るハンクの顔は何だか幸せそうで、冒頭では自殺を遂げようと絶望していたハンクが死体であるはずのメニーとの出会いを通して、もう一度歩き始め、「お尻からオナラが出ちゃうこと」そのものの馬鹿らしさを越えた生への実感に喜びを感じることができるであろうことを予感させる希望的ラストともとれる最後だった。
見終わると、内容そのもののぶっ飛んだ感じ以上に、やさしい感動が胸に広がるとっっってもステキな青春ムービーでした!!