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パターソンのcollinaのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
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公開される前に予告を観たときから、ずっと観ようと思っていたら、公開からずいぶん経ってしまっていた。

「上を目指す」や、「前に進め」という言葉があまりにも苦手な私だけれど、学校に入ってからずっとこの言葉に捕らわれてきた。そんな言葉が嫌だったけれど、言うことを聞いてきた自分がいて、そんな自分も嫌だった。異常なほどに「成功」を求められる世界で私は雁字搦めになって生きているけれど、ジャームッシュ監督は、毎日を生きることをひたすらにいとおしく、うつくしく私たちにみせてくれた。愛おしい人と、犬と、街と、紡ぎだすことば。疲れたからと抜殻になって、世界を見つめることを止めてしまった私を、Waterfallを見つめる彼の日常は、Water fall のように、しとしとと潤す。

昨日、小学校からのともだちと6年生のときの担任の先生と話をした。どうしようもないことしか覚えていなかった。どうしようもない、小さな事ばかり。それがあまりにもいとおしくて、思わず嗚咽しそうだったのは秘密。呼吸を取り戻した。小学生のころと変化をした自分に気づいたし、私の中の大切なまいにちを思い出した。

ちょっとずつ変わっていく、戻らないまいにちを、誰かと一緒に幸せなことで笑って、悲しいことで悲しむ。そんな時間をノートやフィルムに閉じ込めてしまいたい。きっと、でもそんなことをしたら、ノートやフィルムを眺め続けて流されて溺れそうな弱いわたしに、まいにちをいきていくと、手を差し伸べてくれるパターソンやパターソンの街を見失わないでいたいんだ。だから、わたしの傍らにずっといてほしいな。ジャームッシュの「パターソン」に。

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カウリスマキ、小津さんの映画を観て、胸がきゅっとなって、切なくて寂しくなるのに、ずっと観ていたい、いとおしいと思うのと同じなのかな。
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