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園子温という生きもののFoufouのレビュー・感想・評価

園子温という生きもの(2016年製作の映画)
3.0
園子温をめぐるこのドキュメンタリーの制作が2016年で、心筋梗塞で倒れるより先んずること三年。

ドキュメンタリーは冒頭から酩酊する監督を映し出す。場所は監督のアトリエ。等身大のキャンバスにしなだれかかって、絵の具をチューブから直接絞り出してなすりつけては手でそれを伸ばし、人生とは何かについての酔いどれのご高説宣う姿に、自分の青春時代が重なって、なんとも言えない郷愁に駆られもした。へべれけになって好き放題語ってなんのお咎めもなかった時代。

園子温の特権とは、今なお青春を身をもって生きていることにあるのだ、と妙に納得。であればこその、彼の作品に漂う青臭さでもあるか、と。こういう人の成熟とは、どういう形で今後表れる(表れない)ものなのだろう。

自堕落に見えながら、絵に詩にバンドに多才を発揮し、精力的に活動する監督。それら芸術活動の結実としての映画監督の仕事、ととらえればいいのだろうか。寺山修司をイヤでも思い出すわけだが、その名が監督の口から出ることは皆無。寺山のアングラの系譜を園子温に見るというのは、見当違いなんだろうか。ちなみに彼が本作で絶賛する映画監督は、ラース・フォン・トリアー。今の日本では金が集まらないので『ニンフォマニアック』みたいな映画は撮れない、とくだを巻かれていた。数少ない純文学系ないしはカンヌ系が是枝裕和と河瀬直美、とも。

にしても、監督、酒を飲み過ぎるように見える。『希望の国』の撮影と当ドキュメンタリーの密着とが重なっているのだが、現場で指揮をとる監督から酒が抜け切らないのが、ありありとわかる。『ヒミズ』の俳優陣の、台本読み合わせの際の監督の居眠りのエピソードは、19年の大病のことを考えると、笑ってばかりもいられない。そういえば寺山修司の死因は肝硬変だったはず。

神楽坂恵のインタビューには少なからず驚かされた。『冷たい熱帯魚』で監督と出会い、監督の配偶者となる彼女。往時の公私に亘る葛藤を思い出して、声を詰まらせる。『冷たい熱帯魚』ではかなり監督から追い詰められたよう。そうであればこその、あの演技だったであろうに、思わずカメラに向かって負の感情を爆発させてしまうのだ。秘すれば花なのに、と見るか、正直もまた美徳、と見るか。

ところで『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』はシラフでお撮りになったのだろうか。
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