TAK44マグナム

ジオストームのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ジオストーム(2017年製作の映画)
3.5
アンディ・ガルシア大統領は、雷鳴が轟き、崩壊する街を疾走する中でこう言った。
「結婚しろ」


ローランド・エメリッヒと組んで、これまで数々の大破壊ディザスター映画ばかりを作ってきたディーン・デヴリンがついに自ら監督となって世に問うた新たなディザスターパニックが「ジオストーム」であります!

ジオストームとは、世界規模で一斉に発生した異常気象がひとつになって世界を破滅させるであろうと言われている、つまりは超でっかくて危険な自然災害のことで、それが異常気象から地球を守るために建造された「ダッチボーイ」と呼ばれる天候操作衛星がトチ狂ってしまったために起こりそうになってタイヘーン!となり、それを止められるのはこの男しかいない!と、我らがジェラルド・バトラーが宇宙へ旅立つのです!
ジェラルド・バトラーが科学者?
そんな疑問も当然です。
まったくそうは見えないのですから。
でも、大丈夫。やってることは科学でもなんでもなく、結局は暴力と強引な力技で解決してしまうので、いつものジェラルド・バトラーだったよ!と、今夜も安眠できることでしょう。

ジム・スタージェス演じる弟との確執や離れて暮らす娘ちゃんとの約束など、それなりにドラマも盛り込もうとしてはいるんですが、結局やってることはいつもの災害パニックなんでね、そのパニック描写が既視感しかない上に薄味っていうのがもうヤバイ。
本来なら、東京やリオ、ドバイと世界各国で災害が起きるシーンが一番の見どころの筈なんですよ。でも、「東京にどでかい雹が降って穴ぼこだらけになりましたね」「あったかいはずのリオのビーチが一瞬で凍りつきましたね」「ドバイのお金持ちたちが都市ごと津波に飲まれましたね」と、特にカタルシスもないままに短めの災害シーンが挿入されるだけという印象しかないんです。
モスクワなどは熱線攻撃みたいなのをうけて融解してゆくんですけど、チラッとしか見せてくれませんしね。
比較的、香港とオーランドはカーチェイスを含んで魅せてくれますが、それでも食い足りない。
それぞれの災害シーンにドラマがないんですよね。
ムンバイでは少年と犬が描かれますけれど、正直いってとってつけた感がありました。

そのあたりはけっこう冷めて観ていたのですが(と言うか流石に見飽きたので、もっと工夫が必要です)、大統領の関与が疑われるサスペンス要素があったり、国際宇宙ステーションが自爆するといった災害とは別のド派手なスペクタクル描写をメインディッシュにもってくることによって何とか崖っぷちギリギリで踏ん張ってくれたというか、それがもっとショボかったらどうなっていたことやら。
異常にテンポが良いのも観やすくて助かりましたけれどね。

聞くところによると、試写でそうとう出来が酷かったらしく、急遽あのジェリー・ブラッカイマーが呼ばれて追加撮影したみたいなんですよね。
実質的にディーン・デヴリンはクビじゃないですか(汗)
そんなゴタゴタがあった影響が、そこかしこに感じられるのは確かです。
第一、基本的なプロットが完全におかしい(苦笑)
酔っ払いやジャンキーがトリップしている最中に思いついたような陰謀論をベースとして、リアルとはかけ離れた超科学が幅を利かしまくり、衛星が止まれば天気があっという間に元に戻るのです。
熱線兵器もどきを搭載している時点でどうなんでしょうかねえ?
よく中国やロシアが許したな、あれ・・・。


しかしながら、深いことなんぞ考えずに、「あんな状況であんな風に上手くいくかよ!」と、いつものごとく苦笑いしながらツッコミまくれば楽しめる映画であると思います。
どれだけ爆発しようが、どれだけ雷が落ちようが、大丈夫なのです。被害を受けるのは名も知らぬパンピーだけ!
よくよく考えたらものすごい被害がでたような気がしますが、締め方も能天気なもの。

それにしても、一連のエメリッヒ映画や「アルマゲドン」に代表されるディザスター映画の系譜につらなるメジャー大作がいまだこうして作られることに驚きを隠せません。
もう大概、みんな飽きたんじゃないのかな(汗)
と言いつつ、こうして観に行っているわけですけれど、そう、何だかんだ好きなんですよ。
でも、さすがにこのジャンルはもう手詰まり感がハンパないのでした。

あ、もし黒幕に雷が落ちてビリビリ〜ってなってくれていたら評点上げるところだったんですが、惜しいですね。そのぐらい気持ちよくバカをやってほしかった!
バカが中途半端でしたね〜。


劇場(シネプレックス平塚)にて