いみ

だれかの木琴のいみのネタバレレビュー・内容・結末

だれかの木琴(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

面白かった。
冷ややかな感じで冷静に淡々と不気味で不思議なことが起こっていく。でも大きな事件は起こらず終わっていく。

ずっと、タイトルと主演の2人の横顔のジャケットでなんかザワザワしていて気になっていた作品。
観られて良かった。
ザワザワした感覚を裏切ることなく観られた、不思議な映画だった。


物語の核となる主人公の語りのシーン

あれ
あれはいったいなんなんだったんだろう
空き家なのに人の気配がした
二階の窓が開いてた
中に小さな女の子がいる
と、思った
幼い女の子、部屋の中でひとり、でたらめに
木琴をたたいたりこすったり…

(場面変わり何分も。話は進んでいく)

あの女の子は自分の中の音楽を探しているのだ
自分自身がひとつの音楽になりたい
でもできない
そのことに苛立っている
あそこにいるのは私だ
幼いときの
私だ

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考察してみると登場人物、みんな心の中の恥部であり本質を守っている という物語なのかなと思った。
だれかの木琴の鳴る音はその本質のことで、
一見心地よく聞こえるけど実は不気味な音色なのかもしれず、人間の奥底に有る願望や欲望を指しているのかもしれない。


小夜子も光太郎もどことなく、不気味。
小夜子のストーカー行為、不思議だなと思ったのは相手を好きになる感情を利用して旦那を愛するんだよね
決して体の関係はやめないし、むしろ求めていて
美容師が旦那になる想像もしてる。
彼女の愛はそういって他人に属してはじめて昇華するねじまがったものなのかもしれない。
ラストでは旦那が家につれてきた後輩にメールを出していた。
眠気をほっしてあくびをしソファーへ横になり目をつぶるとブランケットが怪しげにふわりと彼女にかかっていくあのシーン、
よかった
不気味だけど妙にエロくて美しくて。
微笑みながら寝る常盤貴子もまた不気味だった。
愛の昇華としての新しいターゲットを獲得したのだろう。。。

旦那の光太郎も変。
一家を守るため超過剰なセキュリティを家に備え、妻のストーカー行為は気になって調べるけどいざ海斗の彼女が怒って家に怒鳴りこんできたらなんの疑いもせず妻の味方をするし。
街で知り合った女とその場かぎりの関係を楽しむあなたのセキュリティは平気なの?って思った。


苛立ち家に乗り込む唯を冷静に止める海斗も実は隠してるんだよね、ナイフを…。
見なくても取り出せるくらいの引き出しに小型ナイフを持っていて、過去に母親をクソババア呼ばわりした人をぼこぼこに殴ったと彼女に告白している…怖い。
なにかをしそう…と思わせといてなにも起こらず。

連続放火犯は美容院ミントに来て
女の人に切ってもらいたい
3ミリだけカットしてほしい
お金をかけて丁寧にやってもらうためにわざわざ理髪店ではなく美容院に来ている
などとクレームまがいな注文をしてきた人だったし。

常盤貴子が電車に乗っている時に見る光景も不思議だった。
みんな携帯をみているなか、1人の初老の女が布から出した本位牌を見つめ涙、彼女はそれをじっと見ているんだよね。


「男性は本質的に女性を希求し、女性は本質的に狂気を希求する」というジャックラカンの名言があるらしい。
主人公含む登場人物はみなその言葉の通りだったかも。

面白かった、興味深く拝見できた。

最後に
娘のかんな、今後どうなるか気になるよ、
しっかりしていて唯一安心できる人間なだけに、達観した若者に成長しそうだな。

演者みんな好きな人ばかりでよかった
常盤貴子、池松壮亮、佐津川愛美、勝村政信、山田真歩、岸井ゆきの
みんな好き。
いみ

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