ノラネコの呑んで観るシネマ

ヒトラーへの285枚の葉書のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ヒトラーへの285枚の葉書(2016年製作の映画)
4.2
戦争で息子を失った夫婦が、ナチス政権への批判を書き込んだカードを、ベルリンのあちこちに置いて行く。
「このカードを回せ」というメッセージと共に。
1940年から3年間、自作カードによる抵抗運動を続けた、ハンペル夫妻の実話を元にした物語。
有名なハンス・ファラダの原作は未読。
たぶん、ダニエル・ブリュール演じる警部の話などはフィクションなのだろうけど、彼をはじめとする夫妻の周りの人々のエピソードが、カードを作って置くだけという地味な物語を、ぐっと深みのあるものにしている。
ナチス政権下の、市民による非暴力の抵抗運動の映画は、近年では「白バラの祈り」という傑作があるが、あの映画でいつの間にか観客がゲシュタポ尋問官に感情移入してしまう様に、この映画ではブリュール警部が共感キャラクター。
コワモテの軍人たちに脅され、思わず保身に走る彼こそが、観客に一番近いリアルな庶民。
なかなか見ごたえのある力作である。
ただドイツ資本も入ってるのに、英語劇なのはなぜに?
やっぱ英語の方が、広く観てもらえるという判断なのだろうか。
まあブレンダン・グリーンソン、エマ・トンプソンの演技は素晴らしいのだけどね。